J1仙台が、セットプレーの新たな「SOFT」を手に入れた。不動のキッカーで、北朝鮮代表のMF梁勇基(28)不在に備え、宮崎キャンプで代役を模索。今季から仙台(S)に加わったMF太田吉彰(O=26)フェルナンジーニョ(F=29)高橋義希(T=24)の3人に絞られた。定位置も梁と争う新顔の三銃士は意欲満々。手倉森誠監督(42)も「梁の存在を、いい意味で忘れる出来」と喜んだ。

 昨季のチーム総得点「87」のうち、セットプレー(SP)で24点(得点=FK5、PK2、アシスト=CK14、FK3)を挙げた仙台。得点の30%近くに直結したSPという“ハード”に対し、今季は梁以外の“ソフト”がある。昨季は関口や西山もキックを練習したが、今季は現時点で新加入の3人に絞られた。梁が不在時の備えだが、それぞれ代役にとどまらない能力がある。

 まずはフェルナンジーニョだ。G大阪時代は、日本代表MF遠藤とキッカーを分担。ブラジル時代は、来日前の03年に「(元ブラジル代表GK)ロジェリオ・セニ相手に、直接FKを決めたことが自慢」と誇らしげ。過去に在籍したJ1の全4クラブで任された実績もある。

 太田も名乗りを上げた。磐田時代、MF名波や藤田のキックを見て育った。「名波さんは、教えるより見て覚えろってタイプ」と太田。利き足は違うが、回転系や弾丸系の蹴り分けを目で盗み、見よう見まね。その中で「左45度から巻いて落とす」形を習得した。

 高橋は、長距離で威力を増すブレ球が武器。今季のJ公式球は、ブレの軽減加工が施されたアディダス社の「ジャブラニ」だが「もう慣れた。違和感はないし早く完成させたい」と黙々とボールを蹴り込んだ。

 流れで崩せない格上に泡を吹かせるSP。手倉森監督は「3人とも決めそうな雰囲気がある。梁のキックに頼ってばかりいられないし、シーズンを通して競争させたい」と“有事”に備えた新兵器の配備に自信を見せた。【木下淳】