<J1:仙台1-0磐田>◇第1節◇6日◇ヤマハ
7シーズンぶりにJ1へ復帰した仙台が、開幕戦で因縁の磐田にリベンジを果たした。MF梁勇基(28)が前半開始26秒、10年の「Jシーズン第1号ゴール」を史上最速で奪い、そのまま逃げ切り。08年入れ替え戦の雪辱に成功した。手倉森誠監督(42)は、先発を示唆していたMF太田吉彰(26)でなく梁を起用。味方をも欺く腹案を大舞台で披露し、03年11月16日以来、2302日ぶりのJ1勝利をつかみ取った。
J1復帰のノロシが上がった。前半開始26秒。右サイドのFW中島がDFパクをかわして突進。「開幕戦だし自分で狙っちゃおう」とシュート体勢に入った時だ。「裕希!」。左後方にいた梁だ。すかさずグラウンダーのパス。走り込んだ梁が、右足を振り抜く。GK八田の股間(こかん)を抜き、ネットを揺らす。雨中で声を出し始めたばかりの、アウェー席も一気に揺れた。
名刺代わりのシーズン第1号ゴールは、95年の横浜Mメディナベージョ(開始50秒)を超える史上最速弾だ。「ラッキーです。裕希のパスが速かったんでミートを心掛けた」と梁。その後は守備に追われ、ボール支配率は37%。それでも猛攻をしのぎ、03年11月16日の京都戦(3-1)以来、2302日ぶりのJ1勝利をもぎ取った。梁は「初J1。もっと緊張すると思っていたけど、意外と落ち着けた」と白星の味をかみしめた。
梁は「先発」だった。J1初采配の手倉森監督が、敵も報道陣も、味方までも欺いた。4日の紅白戦でMF太田を先発組に入れ、梁は控え組。前日5日のミーティングでも迷ったフリをし、幹部にも明確な答えを伝えなかった。この日の会見でも「今朝、風呂で思いついた」と説明した。
だが、腹は固めていた。2月20日の練習試合(対J1東京)に完敗し「帰国後は休ませる計画だったけど、梁を先発候補に入れよう」と思った。そして、前日5日、指揮官は当事者の梁と太田だけに「梁は先発に変わるかも。逆に太田はサブかも」と示唆。「今朝の発表までヨシ君(太田)だと思ってた」(FW中原)と仲間が思った裏で、手倉森監督は「敵を欺くには、味方から」と、大ばくちだったことを明かした。
梁も期待に応えた。2月中旬、北朝鮮代表で合宿中の平壌から、宮崎キャンプ中の手倉森監督にメールを送った。「どこまで自分の状態が上がってるか分からないんです。不安です」。愛弟子の訴えに、指揮官は「心配するな。代表に専念して結果を出してこい」と返信。心のつかえが取れた梁は、AFCチャレンジ杯で5戦4発。得点王とMVPを獲得し、最高の状態で戻ってきた。
チームはこの日朝、08年の入れ替え戦で磐田に敗れた映像を見た。モチベーションを上げてリベンジし、J1の幕が開ける-。手倉森ベガルタが、最高のスタートを切った。【木下淳】



