<ナビスコ杯:磐田5-0山形>◇1次リーグB組◇9日◇ヤマハ

 磐田がナビスコ杯決勝トーナメント(T)進出を決めた。前半15分に韓国代表落選で傷心のFWイ・グノ(25)が復活ゴールでのろしを上げると、前半だけで4得点。後半もイ・ガンジンの初得点を加え、予選リーグB組首位で4年ぶりに予選を突破した。前節、暫定首位で予選の日程を終えていた清水は、横浜が浦和に引き分けたため、同組2位となり3年連続の進出。両クラブの決勝Tそろい踏みは5年ぶりだ。

 あまりのラッキーゴールに思わず照れた。前半15分、DF山本康裕(20)のロングボールに目測を誤った相手GKが“トス”を上げた。ノーマークで待ち受けたイ・グノが、頭で押し込み先制。おなじみの祈りのポーズを忘れ、喜びきれずに下を向いた。選手から祝福を受け、思い出したかのように両手で指を突き上げた。イ・グノは「運が良かったゴール」と振り返った。

 W杯韓国代表落ちのショックをぬぐい去る一発だ。昨季リーグ11得点を決めた救世主も、今季調子があがらずゴールは京都戦の1点のみ。状態がよくないことは自身も分かっていた。だからこそ夜中に自宅近くの公園で1人で体を動かした。寝る前に約1時間、走り込みとドリブルなどボール練習で、本来の状態に戻そうと必死だった。しかし1日、同代表26人で行われていたオーストリア合宿で最終メンバー23人から落選。失意の中、2日に再来日した。

 韓国の両親にも一切連絡をとらないほどショックは大きかった。それでも磐田での試合はすぐにある。必死に切り替えようとその日、ジムへ向かい体を動かした。しかし、どうしてもW杯のことを考えてしまう。ふさぎ込みながら自宅に戻ろうとすると、山本康の姿が見えた。磐田で一番仲がいい親友を心配させたくなかった。「僕も何を言えばいいか分からなかった」という山本康に、イ・グノは気丈に語りかけたという。そばにいてほしい時にいてくれた親友からの、おぜん立ては偶然ではないだろう。試合後のイ・グノは「お互いにチームに貢献できてうれしい」とようやく笑顔を見せた。

 昨季、開幕戦の大敗を含む2戦連敗で苦汁をなめた山形相手に、大量得点できっちり借りを返した。これで約1カ月の中断期間に入る。助っ人の復活に、4年ぶりの予選突破。最高の形で前半戦を締めくくった。【栗田成芳】