<J2:横浜FC2-0岡山>◇第21節◇7日◇ニッパ球

 43歳のカズが決めた。横浜FCのFW三浦知良が後半48分に左足で今季初、昨年3月14日の熊本戦以来のゴール。チームを2-0の勝利に導くとともに、Jリーグ発足の93年から積み重ねた連続得点を18年まで伸ばした。自らの持つJリーグ最年長得点記録を43歳5カ月12日まで更新。夢を追い続けるカズは、第2の故郷ブラジルで4年後に行われるW杯を目指して、まだまだ走る。

 カズの前に、相手のバックパスが転がった。素早くカットすると、ゴールに迫った。大歓声にスタンドが揺れた。GK真子と1対1になり、冷静に左足を振り抜く。総立ちの観客に見守られ、ボールはゴール左スミに突き刺さった。カズダンスを踊る間もなく、ベンチを飛び出した選手たち祝福された。後半44分にカイオに代わって4分後、わずか2プレー目だった。

 「相手からいいパスが来た。落ち着いて蹴れたし、狙い通りだった」と振り返った。優勝したような大騒ぎに「選手とスタンドが一体になれた。生意気を言わせてもらうと、ああいう雰囲気にできるのは(ベテランの)自分たちだけだと思います」と胸を張った。

 試合後はサポーターの前で歓喜を爆発させた。最年長得点記録は「意識していない」という。昨年、一昨年の記録更新は負け試合だったから、心から喜べなかった。「今日は自分の得点で勝てたからうれしい」。苦しかった日々があるからこそ、喜びは倍増した。

 4カ月半、17試合ぶりのJピッチだった。3月21日の草津戦以来、戦列を離れた。右足首痛、右臀部(でんぶ)痛。回復しては再び痛め、治りかけてはぶり返した。年齢からくる衰えもある。W杯で盛り上がる周囲を横目に、孤独な練習を続けた。笑顔で「岡田さんに頑張って欲しい」と言いながらも「本当は、それどころじゃないよね」と弱音を吐いたこともあった。

 W杯中断明けの7月17日にはベンチに戻った。しかし、出番はない。チーム内の競争に勝てなかった。同25日の札幌戦での「カズゴン対決」もかなわず。「出られない悔しさは若いころと変わらない。先発で出たいし、そのつもりで練習している」。続けてきた43歳の努力が実った瞬間だった。

 「ブラジル(W杯)は出たい」と言う。現実的でないことは分かっている。可能性は限りなく0だ。それでも、多くのファンに夢を与え、子どもたちに夢を持つことの大切さを伝えてきたカズは、自らの夢を語ることをやめない。「選手である以上、W杯は目標」。何度も傷つけられ、何度もはね返されながらも、W杯への愛は変わらない。

 「監督はできないし、解説者は似合わない。オレはボールを追いかけているのが一番。サッカー職人なんだよね」。遠くない将来に迫る引退を振り払うように話した。周囲の目は気にしない。散り際、去り際も考えない。この日、Jリーグ152点目を決めた。しかし、カズにはまだサッカー人生のゴールは見えない。