<インタビュー上>

 小野伸二(31)に聞きたい。J1清水は指揮官だけでなく、大量に選手が入れ替わり新年を迎えてもまだ全容が見えてこない。それでも、エスパルスには小野がいる。移籍1年目ながら、笑みを浮かべ楽しそうにサッカーする姿は、見る者にわくわく感を与えてくれた。だから小野に聞きたい。故郷に帰ってきた1年と、始まったばかりの1年を-。

 12年ぶりに故郷に帰ってきた小野は静岡のみならず全国のサッカーファンに絶対的な存在感を見せつけた。ふわりと浮かぶパス。足元に吸い付くトラップ。ヒールでちょんと合わせたら、スタンドで見ていてもボールを見失いそうになった。そのプレーは躍動感とアイデアに満ちあふれ、サッカーの楽しさを教えてくれた。今年は元日から国立にいた。天皇杯決勝で鹿島には負けたけど、小野伸二のいるピッチからサッカーが幕を開けた。◆

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 小野

 簡単に優勝できるものじゃないとあらためて痛感させられたね。前半は異様な雰囲気にのまれてしまった。鹿島には慣れがあったと思う。後半に入って、自分たちの良さが出ている時間で2、3点取れていたらまた違ったはず。1人1人も自分たちに足りないものを感じたと思うし、この悔しさを忘れずに、乗り越えていけたら、今年は必ず良い結果が得られると思う。

 --あらためて、地元静岡でプレーした1年を振り返ってください

 小野

 やっぱり、生まれ育った場所で、プロの選手としてプレーできるのは、すごく幸せなこと。それが実現して、絶対にクラブが獲得したことを損させないという気持ちが強くあった。生まれてから18年間もいた場所だからね。人生の半分は静岡。生まれ故郷のいい空気を吸いながらプレーできていることは、自分の中でもパワーになっている。リラックスもしやすいしね。

 清水商卒業後はJ1浦和に入団。その後、オランダ1部リーグ・フェイエノールト-浦和-ブンデスリーガ・ボーフムを経て、30代を迎えた昨年、清水に加入した。プロ入り13年目の昨季、自己最多の公式戦41試合に出場した。故障がちなイメージもあった天才が、故郷でパワーアップしたことを物語るデータだ。

 --自己評価はどうですか

 小野

 印象としては、そこそこできたんじゃないかなって思う。それだけ体の調子もよかった。けがもなく順調にいっていたしね。ただ、それが全てじゃない。自分自身が得点、アシストとか目に見える結果を残していない。

 --今季の課題ははっきりしているわけですね

 小野

 1年目っていうのは気が張り詰めて、いいものを出せるときだけど、2年目は、なあなあになりやすい。自分をしっかり見つめていかないと、昨年より悪いパフォーマンスになってしまう危険がある。今年は1日1日をもっと大事にしないといけない。

 --昨季はリーグ戦6位、ナビスコ杯4強、天皇杯準優勝。清水の伝統のようになってしまっている「勝ちきれない」という印象は拭えない

 小野

 リーグ戦の出だしは好調でW杯期間前の順位も1位だった。システムが新しくなって、メンバーも変わり、まさに新たなスタートだった。開幕ダッシュに成功して、選手も見てる人たちも今年こそはという期待がどんどん大きくなった。でも、W杯の中断明け以降は、全ての質が落ちてしまい、負けることが多くなった。夏場を乗り切れなかったというのは後悔というか、すごく悔いが残る。そういう、1年だったという気持ちがある。

 --リーグ戦開幕10戦負けなしで前半戦を首位ターンに成功。しかし、後半戦の失速で順位を6位にまで落としました

 小野

 前半戦と後半戦で変化という変化はなかったと思う。ただ、体がうまく動かなかったりとか…。夏場の5、6試合は最悪のパフォーマンスだった。それがチームに大きく影響してしまった。自分自身のコンディションが悪かったことで、チームに迷惑をかけてしまった。それが、原因の1つとしてはあったと思う。◆

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 静岡でプレーする喜びも、勝ちきれなかった原因も率直に語る姿は、前向きに新年を迎えた力強さがあった。明日13日は生まれ変わるチーム、そして新加入の同期生FW高原直泰(31)を語ります。【聞き手・為田聡史】