<インタビュー下>

 小野伸二(31)に聞きたい。監督をはじめ十数人もの選手が入れ替わる。小学生の時からのライバル、FW高原直泰(31)も新加入する。果たして今年こそエスパルスは悲願のタイトルに手が届くのか?

 周囲の期待と不安に対し、いたずらっぽく笑う小野は今季の戦いを「楽しみが増えた」と表現した。

 --今季の清水はアフシン・ゴトビ新監督(46)を迎え、新たなスタートを切ります。昨季は序盤首位を走りながらリーグ6位に終わった。「あと1歩」の壁を越えるには、何が必要でしょう

 小野

 やっぱり、苦しいときこそ、チームを奮い立たせるリーダーが必要。おれが、やろうという気持ちで清水に来たけど、夏場のチームが苦しい時期に、自分自身がめいっていたんで、それができなかった。あとは、前半戦であれだけ失点が少なかったチームが、後半戦に入って失点が一気に増えた。それはチームで全員が感じ合わないといけないことだと思う。

 --同い年の高原選手が加入します

 小野

 一緒にプレーしたいというのは、ずっとあった。素直に相当うれしい。同じチームで一緒にやったことがないしね。今季は2人でチームを引っ張っていきたい。

 --高原選手とは同じ県東部出身で小学生のころからの互いの存在を意識していたでしょうし、ずっと同じように脚光を浴びてきた。ついに同じ色のユニホームに袖を通すんですね

 小野

 お互いにいいパートナーであってライバルである。この関係をずっと保ち続けて、競い合っていく気持ちが大事。遊びでやるわけじゃない。いい仲間でもあるけど、ライバルという気持ちが一番強い。でも、うれしいね。

 --高原選手以外にも今オフの選手の入れ替わりはクラブ史上最大規模となった。さらに、監督交代1年目という状況でもある

 小野

 1年目っていうのもあるし、もともといる選手がチームを出て、新しい選手が入ってくれば、新しいチームになるということ。同時に、みんなが同じスタートラインに立てる。だから、試合に出てた選手が出られない可能性もあるし、その逆もある。フレッシュな1年になって、見てる人にとっても楽しみが増えると思う。

 --小野選手がチームに与える効果は、昨季で十分に証明されました。だが、個人成績は公式戦3得点には納得してますか

 小野

 やっぱり2ケタは行きたい。十分可能だと思うよ。多少エゴイストになってでも狙いにいく。まあ、(藤本)淳吾がいないからPKもキッカーとして蹴らしてもらえれば違うかな(笑い)。

 --それだけ自信があるんですね

 小野

 去年は1年通して長期離脱もなかった。31歳になったけど、こんなに充実していた1年はなかった。まだまだ、全然やれる。

 --最後にズバリ目標は

 小野

 「優勝」という言葉を簡単に使えば優勝になるけど、やっぱり開幕戦がポイントになる。開幕戦で勝ち点3を取れるかどうか、それが重要だと思います。

 

 

 

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 1年目は柔和な笑顔で、チームの和を大切にプレーしていたようにも見えた。それが2年目は「エゴイスト宣言」まで飛び出した。得点に直接的に絡むことにより、勝利をより手元に引き寄せる。故郷でパワーをもらった小野は、その恩返しに「結果」をささげようとしている。エゴイスト小野の実力行使は見逃せない。【聞き手・為田聡史】(おわり)