前日本代表監督の岡田武史氏(55)が、中国スーパーリーグの杭州緑城の監督に就任する可能性が高くなった。6日に中国に渡り条件面などの交渉を行い、合意すれば正式にサインを交わす。Jリーグ優勝を果たした日本人監督が他国で指揮を執れば史上初。岡田氏は4日、青森市内で行われた「北海道・北東北スポーツ科学サミット」で講演を実施。6日に交渉を行うことを認め、去就を今月中旬ころまでに決める方針を示した。さらに破談になった場合、他クラブとの交渉や「浪人」も視野に入れる意向だ。

 日本が誇る名将が次に挑む舞台は、中国になる可能性が高まった。岡田氏はこの日、6日に中国で杭州緑城の幹部と交渉することについて初めて口を開いた。

 岡田氏

 その可能性はありますね。まだ金銭的な条件も聞いていないし、いろいろ聞きたいこともあるので。

 中国の地元紙の報道では年俸80万ドル(約6000万円)で基本合意などと報じられている。だが、現時点で条件交渉が残っている。正式サインの可能性についても、言葉を続けた。

 岡田氏

 それもあるかもしれないけど、いろいろ聞いてみて、ということ。

 慎重な姿勢を示しつつ、否定はしなかった。

 来季の去就決定についての期限も示した。6日の中国を経てスペイン入り。10日のスペインリーグのRマドリード-バルセロナ戦のテレビ解説を務めるが「日本に帰国するころには決めたいと思いますね」と、おおよその目安も示した。今月中旬までには注目の去就を決断する。

 当初は浦和など複数のオファーを受け、浦和と合意間近とみられていたが、スタッフ人事や戦力補強など、条件面で浦和側との考え方に開きがあったもようだ。「浦和に断りを入れたのか?」との質問には相手側を配慮しながら言った。

 

 岡田氏

 それは迷惑がかかるから言えないけど、(打診のあった)国内のクラブには、ここ(杭州)を優先するということは伝えました。

 テレビのゲスト解説を行った11月27日のロンドン五輪アジア最終予選U-22日本代表-同シリア代表戦後、3クラブからのオファーを認めた。そして杭州緑城との交渉を直前に控えたこの日、目まぐるしい交渉状況を示唆した。

 岡田氏

 (3つから候補を)絞った。それでも(今後の可能性が少しでもあるなら交渉したい)、と言って下さるクラブもある。ただ、ここがダメだから、ここというやり方は失礼なのでしない。

 杭州緑城との交渉が破談した際の「保険」をかけるやり方はしないが、すでに破談の場合に限り、再交渉を求めているクラブの存在も明かした。

 岡田氏

 もしそう(破談に)なって、他の話があれば聞くこともあると思う。なければ浪人というか、現状の活動を来年も続けるかもしれない。

 現時点で最有力は杭州緑城。Jリーグ制覇を果たした日本人監督が他国で指揮を執れば史上初となる。周囲には日本国内ではなく「アジアでの挑戦」という視点を示しているという。日本サッカー界は多くの選手を海外に送り出してきた。J制覇、日本代表を指揮して海外へ。岡田氏が日本人監督の新たな成功例をつくることになるのか-。

 ベスト16に日本を導いた2010年W杯南アフリカW杯から1年5カ月が経過した。岡田氏が、いよいよ現場復帰の決断を下す日が迫っている。【菅家大輔】