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 クラブW杯:バルセロナ4-0アルサド>◇準決勝◇15日◇横浜国際

 これが世界一の神業だ!

 欧州王者バルセロナが準決勝でアジア王者アルサド戦に快勝した。3年連続FIFAバロンドール(年間最優秀選手)受賞が濃厚なFWリオネル・メッシ(24)はFK、オーバーヘッドシュートなどで観客を沸かせ、後半19分にはピンポイントのスルーパスでMFセイドゥ・ケイタ(31)へのアシストも決めた。18日の決勝(横浜国際)では、09年大会以来の優勝を目指して南米王者サントスと対戦。「ブラジルの宝」FWネイマール(19)と対決する。

 メッシが宙に舞った。後半22分、スルーパスに抜け出した。ゴール右でGKと競り合い、ボールが緩やかに空に。迷いなく169センチの体を跳躍させた。オーバーヘッドの左足シュートは惜しくも、ゴール前を素通りしたが、ミラクルゴールの予感に約6万6000人の歓声が最高潮に達した。

 前半39分、FWビリャの負傷退場で、前線の右サイドから真ん中に入った。そして後半、一気にアクセルを踏み込んだ。同9分、トラップで前を向くと、3人を置き去りにして左足シュート。同18分にはゴール正面約25メートルのFK。まばゆいフラッシュを受けながら放ったシュートは、GKの好セーブで弾かれたが、精度の高さもみせつけた。

 極め付きは同19分。エリア手前から右足で針の穴を通すようなスルーパス。チーム3得点目を決めたMFケイタから「自分はストライカーではないけど、メッシがいつも良いパスをくれるので得点をすることが出来ている。感謝の気持ちだよ」と抱え上げられた。ボールを持つ度に、神業を繰り出し続けた。驚きと期待の大歓声に会場が揺れた。

 来年1月発表のFIFAバロンドール(年間最優秀選手)では、同僚のMFシャビ、FWロナルド(Rマドリード)と最終候補3人に残り、受賞が濃厚だ。3年連続の戴冠なら、83~85年のプラティニ氏(現UEFA会長)に続く2人目の偉業。同賞を3回獲得した選手は他に、元オランダ代表FWのクライフ氏とファンバステン氏がいるが、24歳で達成すれば最年少。プロ8年目で伝説の選手に肩を並べ、最多記録達成の可能性も大きい。

 一方、私生活では年間100億円以上を稼ぐとは思えないほど“庶民派”でもある。12日から13日にかけて選手は観光に出掛けたが、メッシが向かったのは横浜市内の大型量販店。警備員の帯同も断り、ジャージー姿。日ごろから「とても普通の生活を送っている」と話す。店内では自分が表紙のサッカーゲームを手に取るおちゃめな姿も目撃された。

 今回は家族に加え、恋人のアントネジャさんも一緒に来日した。3年前から付き合う幼なじみで、今月には地元紙に「父親になるのが夢」と語った。スキャンダルとは無縁で、堅実な愛を育くんでもいる。

 バルセロナの一員で前回来日したのは17歳の時。04年鹿島との親善試合で後半43分にゴールした。それ以来の日本での得点はお預け。試合後は、取材エリアを通らず、コメントせずに会場を後にするスペインでの流儀を貫いて次戦に備えた。若きブラジル代表FWネイマール擁するサントス戦。世界最高のプレーヤーは誰なのか。チームを勝利に導くゴールで、証明してみせる。【阿部健吾】