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 クラブW杯:コリンチャンス1-0チェルシー>◇決勝◇16日◇横浜

 南米王者コリンチャンス(ブラジル)が、スター軍団の欧州王者チェルシー(イングランド)を破った。後半24分にMFダニーロのシュートが相手選手に当たり、高く跳ね上がったボールをFWゲレロが頭で押し込んだ。3万人ともいわれるコリンチアーノ(同クラブサポーター)が詰めかけ、歓喜の発煙筒がたかれるいつも通りの雰囲気の中、コリンチャンスが00年以来、2度目の王座に輝いた。南米勢が世界一に輝くのは06年大会でインテルナシオナル(ブラジル)がバルセロナ(スペイン)を破って以来6年ぶりで、優勝賞金500万ドル(約4億円)を得た。

 コリンチャンスの屈強な選手たちが、チェルシーのスターたちを次々にはね返した。相手のキーマン、FWフェルナンドトレスは、センターバックのDFパウロアンドレを中心にマーク。球際でもしっかりと競り合い、得点を許さなかった。自慢の守備陣はリベルタドーレス杯から16戦でわずか4失点。この日もFWゲレロのヘディングゴールで唯一の得点を奪うと、そのまま逃げ切った。

 コリンチャンスの優勝に、2万人とも3万人ともいわれるサポーターが一斉に歓喜の雄たけびを上げ、勝利に酔いしれた。チチ監督は「サポーター全員に恩返しできたことがうれしい。ブラジルに残ったサポーターも気持ちではついてきてくれていた。ありがとう」と感謝の言葉を口にした。

 サポーターの力が、ギリギリのプレーでも、コリンチャンスイレブンの背中を押した。試合開始は午後7時30分だったが、お昼過ぎからスタジアムや新横浜駅周辺にサポーターが集まり、飲めや歌えやの大騒ぎ。中には借金をしてまで来日した熱狂的ファンもいるという人々が、電車の中にも「コリンチャーンス」と叫んだ。

 試合中はスタンドで赤い発煙筒の炎がともった。ブラジル国内と同じ空気の中、選手は心地よさそうにプレーした。パウロアンドレは「素晴らしい応援だった。でも普段からあれくらいサポートしてくれているから驚かなかったよ」と笑った。

 戦う前まではブラジル国内のメディアですら、チェルシーの勝利を予想した。なんといってもロシアの富豪アブラモビッチ氏が作り上げたチームだ。移籍市場の動向を報じるインターネットサイト「トランスファーマーケット」によると、コリンチャンス全員の移籍金と、チェルシーが今季獲得したベルギー代表MFアザール1人の移籍金が、ほぼ同じ約40億円だという。

 しかし試合になれば関係なかった。Jリーグ出身のダニーロやエメルソンは「ここで世界一になることができて、本当にうれしい」と口をそろえた。パウロアンドレは今日17日、チーム便とは別の飛行機で渡米する。「ラスベガスとマイアミに行くんだ。カジノで楽しむよ」。明るく陽気なコリンチャンス。堂々と世界一のタイトルに輝いた。【千葉修宏】

 ◆コリンチャンス

 1910年に創設されたブラジル1部の強豪。本拠地は約3万8000人収容のパウロ・マチャド・デ・カルバリョ・スタジアム。全国選手権優勝5回、州選手権優勝26回。00年のクラブW杯(当時はクラブ世界選手権)では決勝で同じブラジルのバスコ・ダ・ガマを下して初代王者。ブラジル国内では、リオデジャネイロのフラメンゴと並び、絶大な人気を誇り、ブラジル国内だけで2000万人以上のファン数を誇る。