<プレナスなでしこリーグカップ:仙台3-1伊賀>◇1次リーグA組◇16日◇石巻フットボール場

 仙台レディースが新人FW井上綾香(18)の初ゴールで伊賀に逆転勝ちし、カップ戦初勝利を挙げた。1-1の後半7分、DFの裏へ抜け出すと、GKをかわして左足で流し込んだ。地元石巻出身の千葉泰伸監督(42)にとっても負けられない一戦で、初めてFW起用した期待の星が公式戦1カ月半ぶりの勝ち点3をもたらした。

 井上の圧倒的なスピードに、石巻に集まった2014人のサポーターが沸いた。1-1の後半7分、MF高良のスルーパスに抜け出しGKと1対1。「前に出てきていたのが見えた」と一気に抜き去ると、左足で流し込んだ。連敗を止める勝ち越しゴールに「GKをかわすところまでは落ち着いてたけど、絶対外せないと思ったら超緊張しました」と初々しい笑顔を見せた。

 新たなポジションで躍動した。これまではU-17(17歳以下)代表でも務めた右サイドハーフでの起用がほとんど。ケガ人続出の影響もあって1週間前から2トップの一角に指名されたが、ひそかに狙っていた。「栃木にいたときはFWかトップ下だったので、監督に言われたときは『よしっ』って感じでした」。高いDFラインの裏に広がるスペースを狙って走り続け、相手に脅威を与え続けた。

 悔し涙が井上を成長させた。開幕から公式戦全試合でベンチ入りを続けるが、5月25日のアウェーINAC神戸戦で“事件”は起こった。後半19分に途中出場したものの、まったく体が動かず43分に交代。試合後に監督から「準備が悪い。メンバーに入っている意味がない」と全員の前で叱られた。試合中のチームメートからのゲキも、すべて期待の表れ。井上は「悔しくて涙が出る。自分が悪いんです」。成長の糧として受け止め、日々の練習に取り組んでいる。

 同じ河内ジュベニール出身で「中学の時からあこがれ」というMF鮫島の後押しもあって加入した仙台で、先輩の誕生日に決めた初ゴール。偉大な存在に近づくため「もっとゴールが取りたい」という井上が、大きな1歩を踏み出した。【鹿野雄太】