<サッカー:U-12ワールドチャレンジ2013>◇27日◇東京Vグラウンド

 驚異の12歳が、衝撃の凱旋(がいせん)ゴールを決めた。スペインの名門バルセロナU-12のFW久保建英(たけふさ)が、東京Vジュニアとの開幕戦開始59秒に先制ゴール。4-0の大勝に貢献すると、5-0で圧勝したC大阪U-12戦でも先制点を決めた。スペインに渡って2年、Jリーグ下部組織相手に圧倒的な強さをみせたバルセロナで「和製メッシ」は急成長を遂げていた。

 人工芝ピッチを取り囲んだ約2000人ものファンや報道陣、関係者がどよめいた。開始59秒、久保がペナルティーエリア内でパスを受ける。左45度から得意の左足を振り抜くと、ボールは一直線にゴールへ。今季のチビリンピックとダノン杯で全国4強入りするなど堅守を誇る東京VのDF陣を、一発で破った。

 その後も「久保劇場」は続く。4-2-3-1の左ウイングで攻撃をリード。巧みなボール扱いで抜け出し、正確なパスで味方を生かした。前半で1度は退いたが、後半途中からボランチとして再登場。テンポよくボールを回し、絶妙のスルーパスも見せた。チームの方針で久保自身は取材を受けなかったが、ナバーロ監督は「ゴールもしたし、タケ(久保)のプレーには満足している」と話した。

 川崎FのU-10チームにいた一昨年8月、入団テストに合格して家族でスペインに渡った。得意のドリブルで地元紙にも「和製メッシ」と紹介されたが、同監督は「パスや連係プレーもプラスされた。クラブのサッカーを取り入れ、よくなった」。昨年のダノン杯世界大会で準優勝したレジスタFCの渡辺監督は「すごく成長している。状況判断のスピードが驚異的」と、2年での進化に驚いた。

 年齢別に細かくチームが分かれるバルセロナの下部組織。このまま順調に成長すれば、18歳でプロ契約となる。バルセロナBなど下部リーグからトップを目指したり、他クラブでプロになる道もある。狭き門ではあるが、首脳陣も将来のトップチーム候補として期待している。もちろん、日本やスペインで代表としてプレーする可能性もある。

 「素晴らしいのは環境への適応の速さ。最初から地元の学校に通い、今はカタルーニャ語も理解する」とナバーロ監督。「メッシというより、イニエスタかペドロ。ただ、誰かにではなく、タケフサにはタケフサのままでいてほしい」。世界屈指の強豪で順調に成長する久保の前には、夢が広がっている。【荻島弘一】

 ◆久保建英(くぼ・たけふさ)2001年(平13)6月4日、川崎市生まれ。8歳の09年に川崎Fの下部組織のセレクションに合格し、FWとして活躍。10年にはバルセロナスクール選抜の一員としてベルギーの大会でMVPを獲得した。11年8月にバルセロナ下部組織の入団テストに合格、2シーズン目の12-13年はリーグ戦30試合で74ゴールして得点王に輝いた。2年前で135センチ、33キロ。今も150センチ足らずと、大型選手が多い中で小柄。

 ◆U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ

 12歳以下のチームによる11人制の招待大会で、海外からバルセロナ、リバプール(イングランド)、チョンブリ(タイ)が参加。全日本少年大会優勝の鹿島、チビリンピック制覇の仙台など国内9チームと合わせた12チームが3組に分かれて1次リーグを行い、上位8チームが決勝トーナメントに進出する。29日までは東京Vグラウンド、30日の準決勝、決勝は味の素スタジアム西競技場で行われる。