<高校サッカー:京都橘3-0第一学院>◇2回戦◇2日◇味フィ西

 背中にのしかかる重圧を振り払う1発だった。京都橘の10番FW中野克哉(3年)が決勝弾を決め、初戦突破を導いた。後半15分、オフサイドラインぎりぎりから抜け出し、ドリブルで突破。左足から放たれたシュートは、ゴールへ一直線に突き刺さった。「ワンチャンスを狙っていた。なんとか1点取ろうと」。エースの一振りだった。

 1年生から国立の地を踏んだ。前々回大会は準優勝、前回大会は4強と輝かしい成績を残した。しかし過去2度の4強入りはスターの存在が大きい。2大会前は、主将の仙頭と現在J1名古屋で活躍するFW小屋松が得点王に輝いた。小屋松は前回大会も3得点だった。「今までは先輩たちに連れてきてもらったと思う」。

 自分の番が回ってきたのは突然だった。前回大会敗退後、涙にくれたロッカールーム。小屋松が「10番」のユニホームを脱ぎ、中野に着せてくれた。「次はお前の番やぞ-」。そう言われているようだった。「知哉くん(小屋松)に追い付かないといけない」。京都橘の10番を背負う責任感が芽生えた。

 米沢監督も「今まで(先輩に)頼っていた。悪い流れでも自分のワンプレーで(流れを)変える、彼にはそういう責任を持って欲しくて10番をつけさせている。力は持っているので」と期待を寄せている。

 サッカーを始めた頃は、6つ上の兄晃さん(23)のプレーを見ているだけ。07年度の選手権に奈良育英で出場し、ゴールを決めた兄をスタンドから見ても「高校サッカーってかっこいいな」と思っただけだが、今は違う。「橘の10番として注目されているからこそ、やらないといけない。自分なりの10番を見せたい」。自覚がある。悲願の初優勝へ。新エースの3度目の挑戦は始まったばかりだ。【小杉舞】

 ◆中野克哉(なかの・かつや)1996年(平8)9月13日、奈良市生まれ。鳥見小1年でサッカーを始める。13年度選手権大会優秀選手。日本高校選抜で欧州遠征も経験。好きな選手はメッシ。168センチ、53キロ。

 ◆京都橘の直近2大会VTR

 12年度は決勝で鵬翔(宮崎)にPK戦で敗れ準優勝。主将のFW仙頭と2年生エースとして10番を背負っていたFW小屋松の2トップが大ブレーク、5得点ずつ挙げダブル得点王に輝いた。2年連続出場となった13年度は、J1名古屋に内定していた小屋松を擁するも4強。改築で最後となった国立の準決勝で星稜(石川)に0-4で敗れた。