<高校サッカー:星稜4-2前橋育英>◇決勝◇12日◇埼玉

 あと1勝が、遠かった。青空の下、前橋育英(群馬)のMF渡辺凌(3年)はシャツを頭からかぶった。しかし、すぐに顔を上げ、寝ころぶ仲間に手を貸した。自然と悔し涙がこみ上げた。「もうコイツらと一緒にサッカーができないんだ」。初進出した決勝で1度は勝ち越しながら、延長戦で力尽きた。

 勝利に近づいた3分間だった。1点を追う後半8分、今大会初先発の2年生FW野口が、左足ゴールを決めて同点。さらに同10分には渡辺凌がドリブルから切り返し、ゴール右上へ見事にコントロールした今大会初得点を決めた。「狙い通りだった。一瞬、勝ったと思ってしまった」。その後も攻め続け、最多10本のシュートを放ったが、追加点は奪えなかった。

 過去4大会は準決勝で敗れ、ようやく勝ち進んだ決勝の舞台。山田監督は「ショックですけど、準決勝に勝って1つ上に来て、何かが足りないからこの結果です」と淡々と振り返った。強豪校と言われながら結果を残せず「もういいや」と、やめようと思った時期もあった。それでも生徒の顔を見ると、やる気が湧いてきた。「また諦めず、来年、再来年とチャレンジしないといけないです」。

 「史上最弱」と言っていたチームが、学校の歴史を塗り替えて準優勝を果たした。山田監督はロッカールームで「みんなを怒れなくなるのが寂しいな」。渡辺凌は、3年間で褒められたのはたった2回。「怒られたことも思い出。ありがたかった」。感謝の気持ちを胸に、前を向いた。【保坂恭子】