女子サッカーのレジェンドMF澤穂希(36)がW杯での“日本&世界記録”へ歩み出した。所属するなでしこリーグINAC神戸は27日、神戸市内で始動。澤は昨年5月以来となる日本代表復帰、今年6月の女子W杯カナダ大会出場へ意欲を燃やした。W杯出場となれば日本女子最年長記録で、6大会連続は男子も含めて“世界記録”だ。日テレ時代の恩師、松田岳夫監督が就任し、11年W杯優勝メンバーのFW大野、MF鮫島、DF近賀も加入と、充実した環境がそろった。

 チームのV奪還、そしてW杯連覇へ澤のスイッチが入った。練習後、グラウンドから引き揚げ、穏やかな表情でW杯への思いを語った。

 「コンディションさえしっかり出来れば、そこ(W杯)につながると思います。選ぶのは監督なので、行きたくても選ばれないこともある。でも、やるからには全力で。そこは見据えて、1日1日無駄のないようにやりたい」

 15歳で代表に選出されて以来、女子サッカー界をリードしてきた。11年W杯は米国戦での同点弾など5ゴール1アシストで得点王とMVPに輝いた。アジア選手初の世界年間最優秀選手「FIFAバロンドール」にも選ばれた。今年6月のW杯に出場すれば、日本女子最年長記録を更新する。6大会連続は男子でもおらず“世界記録”になる。昨年5月のアジア杯を最後に代表から遠ざかっているが、36歳の今も走り続けるベテランは、W杯への道筋を見据えている。

 今季INACに、澤と20年以上の付き合いになる松田監督が就任。前回W杯優勝メンバーの大野、近賀、鮫島らも加入した。「松田監督の下でやりたいサッカーが出来る。技術の高い選手も戻ってきたり入ってきた。ポゼッション(サッカー)を求めていたので、それが出来るのが整った」。クラブで結果を出すことが、代表復帰への道を開く。信頼するメンバーがさらに増えた今季は、うってつけの環境が整ったと言える。

 松田監督は「体力的に落ちた部分はあるかもしれないが、プレーの質は落ちていない」と高評価。今後についても「まだまだうまくなる。澤がやれることを1つでも、2つでも増やしてやりたい。去年よりいいプレーをさせて、輝かせるというのは自分の1つの役割」と代表復帰のサポートを約束した。レジェンド澤のW杯イヤーがいよいよ幕を開けた。【鈴木絢子】

 ◆澤穂希(さわ・ほまれ)1978年(昭53)9月6日、東京都府中市生まれ。91年読売ベレーザ(現日テレ)入団、93年に15歳で代表デビュー。11年からINAC神戸。同年W杯ドイツ大会で優勝しMVP、得点王獲得。同年FIFA女子年間最優秀選手賞受賞。12年ロンドン五輪銀メダル。国際Aマッチ197試合82得点。165センチ、54キロ。血液型AB。

 ◆女子W杯の最年長出場記録

 95年大会のブラジルGKメグが6月9日のドイツ戦で記録した39歳5カ月。GK以外のフィールドプレーヤーでは11年大会のフランスMFスベランの37歳11カ月。日本では91年大会の11月21日米国戦に出場したGK鈴木政江の34歳10カ月が最年長出場。GK山郷のぞみは出場機会はなかったが、11年大会に36歳5カ月(開幕時)でメンバー入りしている。なお男子の最年長出場は43歳3日でコロンビアGKモンドラゴンが14年大会の日本戦で記録。