東日本大震災の影響でJリーグホーム開幕戦を中止した磐田は13日、16日に行われる次戦ナビスコ杯予選(対広島=広島ビ)に向けて練習を再開した。同試合の開催については14日に正式決定されるが、被災地の惨状を気遣う監督や選手たちは、複雑な胸中のまま汗を流した。

 当初、この日はホーム開幕戦だった。だが、磐田イレブンは午前9時半から磐田・大久保グラウンドで、練習を行った。フィジカルトレーニングを終えると、その後は紅白戦を行った。次戦ナビスコ杯予選リーグ初戦の広島とは、昨年の決勝で死闘を演じた余韻が残る。同杯の開幕を告げるには、もってこいのカードだが、選手はどこまでも淡々とメニューをこなしていった。

 普段の試合3日前となれば、相手を想定しながらのメニューや張り詰めた雰囲気の中で練習が行われる。この日も試合を見据えて入念な調整は行われた。ただ、リーグ戦が中止となった現状では、試合開催は今日14日まで決まらない。その後の予定も予断を許さない。柳下正明監督(51)は「ゲームをやって(被災者の)励ましになるならやった方がいい。でもスポーツどころじゃないと感じている人もいるなら、やらない方がいいと思う。すごく難しい問題」と複雑な胸中を明かした。

 練習は再開されたが、選手やスタッフも気が気でないのが現状だ。福島第2原発にほど近い、福島県富岡町出身のDF本田慎之介(20)は「家族の無事は分かったけれど、まだじいちゃんと連絡が取れない」と心配そうに話した。岩手県出身のDF山本脩斗(25)も「家族とはメールで数回連絡できた。でも電話は1回もつながらないし、友達とかもいるのですごく心配」と声を絞り出した。

 それでも、試合に向けた準備を怠ることはできない。今日14日は非公開練習が予定されている。柳下監督は「どんな状況でもいいコンディションで行えるように準備をするだけ」と強調した。【神谷亮磨】