<J1:横浜3-0鹿島>◇第7節◇23日◇国立

 鹿島MF小笠原満男(32)が、どん底からの王者奪還を誓った。横浜にまさかの完敗。東日本大震災後、国内公式戦初勝利をまたしても逃した。被災したカシマスタジアムが使えず、国立競技場をホームに迎えた一戦。鹿島が同スコアで敗れたのは、07年9月のアウェー名古屋戦以来、実に3年7カ月ぶりという屈辱的敗戦からの再スタートとなった。小笠原は雨の中訪れた鹿島サポーターに勝利を届けられず、悔しさを押し殺しながら、巻き返しを誓った。

 立ち上がりに集中力を欠き、失点を喫した。パスミスも目立ち、運動量も少なかった。引いた相手を崩す課題は解消されておらず、前がかりになって攻守のバランスを崩した。屈辱の0-3の完敗。試合後、待ち受けていたのは鹿島サポーターからのブーイングだった。

 それでも、小笠原は「雨の中来てくれた方に、ふがいない試合を見せてしまって申し訳ない。どん底からのスタートになりますが、ここからはい上がって、チャンピオンになりたい」と、込み上げる悔し涙をこらえながら前を見据えた。

 震災でスタジアムとクラブハウスが被災。ガソリン、食料の不足に加え、福島第1原発事故による放射能の影響で練習中断を余儀なくされた。サッカーに集中する環境を整えることが難しかった。現在も高低差約10センチの起伏があるグラウンドで練習している。だが、小笠原は「被災した方に比べれば、僕らはサッカーができることに感謝しないといけないでしょ」と、一切言い訳をしなかった。

 故郷でもある東北の被災地を思う一方、本拠地茨城の復興も気に掛けている。鹿嶋市内の飲食店が被災により経営が厳しいと人づてに聞いた小笠原は、クラブスタッフに「弁当食べようよ」と声を掛け、出前の注文を自ら取っている。県内農産物が風評被害に遭っていると聞くと、あえて茨城の野菜を買うように心掛けたという。それだけに、勝利で再スタートを切りたかった。

 鹿島がリーグ開幕後、2試合勝利がなかったのは07年以来。だが、この年は開幕後5試合勝利なしの状況から、劇的な逆転優勝を飾っている。小笠原は「苦境を力に変えるのがアントラーズ。それは被災した方々と一緒です」と力強く話した。【塩谷正人】