<J1:川崎F2-1G大阪>◇第13節◇29日◇等々力

 雨の等々力に、ケンゴールがさく裂した。川崎FがG大阪に逆転勝ちした。MF中村憲剛(30)は後半16分、左足ミドルシュートを決めて追いつくと、さらにロスタイムにはFKから右足で決勝弾。6月のキリン杯日本代表には選ばれなかったが、視察した日本代表アルベルト・ザッケローニ監督(58)にスーパーゴールを見せつけた。G大阪は4連勝を逃した。

 ゴールから約25メートルのFKだった。「ボールを置いた瞬間、入りそうな気がしました。結果論ですけど」。中村が右足で振り抜いたボールは奇麗な放物線を描いた。相手守備陣の壁と、GKの伸ばす腕をすり抜け、ゴール左隅に吸い込まれると水しぶきが上がった。中村は1度はベンチへ駆けだしたが、すぐにUターンしてゴール後方へ全力疾走。強い雨の中、応援してくれたサポーターと喜びを分かち合った。試合はそのまま終了した。

 「しびれましたね。こういうことはめったにない。まさにブザービーターだね。サッカー、やめられないです」。約30分前には、左足で今季初得点となる豪快なミドルシュートを決めた。何度もゴール前に攻め込みながら決めきれないチームの嫌な流れも止める2発だった。

 昨年はW杯南アフリカ大会に出場。しかし、ザック率いる6月のキリン杯メンバーには選ばれなかった。「常にクオリティーの高いことをしないといけないということ」と、自分のパフォーマンス不足を認める。それでも、日の丸を背負う気持ちは強い。東日本大震災後は、今季の全公式戦で1ゴール、1アシストにつき10万円を震災の復興義援金にすることを表明。3月22日に行った川崎駅での募金活動では「クラブとかそういう枠は関係ない」と、被災した仙台のタオルマフラーを肩に巻いて募金を呼び掛けた。

 これでクラブは、鹿島、C大阪、G大阪と続いた「ACL組」との3連戦全試合で勝ち点をゲット。中村は「(チームは)この勝ちを自信にしてもいいと思う。次につなげたい」とうなずいた。見事なケンゴールがチームの起爆剤となる。【由本裕貴】