<J1:仙台2-1G大阪>◇第15節◇15日◇ユアスタ

 今季初出場した仙台のFW柳沢敦(34)が、決勝点を演出し、勝利を呼び込んだ。4月中旬の左膝手術を乗り越え、1-1で迎えた後半38分から途中出場。同41分に右サイドで体を張って起点となり、FW赤嶺真吾(27)の決勝点につなげ、G大阪を下した。チームも1シーズン制では最長タイ記録の開幕から10戦不敗。0-3で磐田に敗れた首位柏と勝ち点2差の2位に浮上した。震災の影響で照明が完備されず、平日のデーゲーム開催だったが1万4519人が集まった。

 ベガルタゴールドの背番号30がベンチから出てきた瞬間、ユアスタが大歓声に包まれた。1-1の後半38分。ついに元日本代表FW柳沢が、仙台移籍後初めてピッチに登場した。

 わずか3分後。右サイドでくさびに入ると懐深くボールキープ。DFを引きつけて、右サイドを上がってきた昨季京都の同僚MF角田に絶妙なパスを出した。フリーでペナルティーエリアに進入した角田からのクロスを赤嶺が冷静に押し込んだ。「カク(角田)も赤嶺も素晴らしかった。流れの中で取れて良かった」と柳沢は笑った。

 「魔の時間」も柳沢がコントロールした。5分け中3試合で試合終了間際に追いつかれた。この日も2-1とした直後の同44分、自陣右サイドでMF関口がファウル。FKの名手G大阪遠藤に絶好のチャンスを与えたが、柳沢が「落ち着け!」と両手を広げた。4分間のロスタイムも、腕時計を着けているかのように自身の左手首を指さし、時間の使い方を訴え続けた。

 移籍1年目だが既にチームの精神的支柱だ。3月のキャンプ最終日に主将に任命された。開幕戦直後の3月11日、東日本大震災で被災。だがほとんど仙台を離れず、津波の被害が甚大だった仙台市若林区に赴き自らボランティア登録して、被災者を助けた。この日はチームとして初めて避難所生活を送る45人をスタジアムに招待していた。「被災された方の分まで頑張らないといけない」と初出場でいきなり結果を出した。

 4月12日に古傷の左膝を手術。チームが好調を維持する中、1カ月以上リハビリを強いられた。「好調の中に入っていく難しさを感じていた。すんなりと入っていけるよう、注意深くチームを見ていた」。開幕10戦不敗の好調のチームに、大黒柱も復活。だが鹿島で5度の優勝経験者は「まだ10戦にすぎない。誰も満足はしていない」とクールに会場を後にした。【三須一紀】