<天皇杯:東京1-0C大阪>◇準決勝◇29日◇長居

 来季J1に昇格するJ2東京が、C大阪に競り勝ち、クラブ史上初の決勝進出を決めた。J1相手に互角以上に渡り合い、後半32分にMF谷沢達也(27)が右足で決勝点を入れた。J2クラブの決勝進出も史上初の快挙。来年1月1日の決勝(国立)は、横浜を延長の末、4-2で破ったJ2京都と対戦する。今季の天皇杯は史上初のJ2同士が決勝で対戦する。

 終了ホイッスルが、心地よかった。東京イレブンは、ほぼ全員が試合後に足をつった。ピッチ上に倒れた選手が何人もいた。決勝ゴールの谷沢は、後半40分に息切れし、左足にけいれんを起こし、同42分には交代するほど、全員がピッチ上を走り回った。クラブ初の決勝進出。「その代償としては軽いもんです」。試合後、谷沢は最高の笑顔を見せた。

 前半から圧倒した。11人が1つの生き物のように連動した。最前線でFWルーカスが相手DFをチェックし、2列目の3人がその後を追うようにパスコースを消した。2ボランチも4バックも相手にスペースを与えず、こぼれ球を拾いまくった。DFの要・今野は「こんなに楽しくサッカーやるのは初めて。自然と笑みが出ます」と白い歯を見せた。

 得点シーンも連動から生まれた。今野が起点となり、8本のパスをつなぎ、最後は谷沢が右足を振り抜いた。「入ってくれ」と祈る谷沢の願いが通じたのか、バーに当たったボールが、ネットを揺らすと、全員がピッチ上でもみくちゃになり、雄たけびを上げた。

 今季のテーマは「強くなってJ1に戻ること」だった。守備重視のチームが多いJ2で、スペースを作って、わずかな隙をこじ開ける攻撃にこだわった。ゴール前を固める相手に苦戦を強いられる中、連動して守って、連動して攻める、前線で奪って素早く攻めることが身についた。大熊監督は「J2で1年間やってきたことを天皇杯でも続けられている」と満足した。

 リーグ戦の目標が優勝なら、天皇杯の目標は自分たちの戦いを証明することだった。来季はJ1に復帰するだけに大会前、同監督から「来季、J1でどれだけ戦えるか、しっかり試してみようじゃないか」とハッパを掛けられた。3回戦では神戸との延長戦を2-1で制し、準決勝で浦和に1-0で勝った。J1相手に3連勝と、自信を高めた。

 石川は「昨年、J2に落としたのは自分たちの責任です。J1に戻るだけじゃ意味がない。強くなって戻らないと意味がない」。東京が名誉あるビッグタイトルを手に、J1に凱旋(がいせん)するつもりだ。【盧載鎭】