横浜木村和司監督(53)が電撃解任された。29日の天皇杯準決勝・京都戦(国立)での敗戦後に解任をクラブから通達された。30日、横浜市のクラブハウスで発表された。嘉悦朗社長(56)は、解任した理由として、リーグ戦後半の失速や戦術面での一貫したマネジメントができなかったことなどを挙げた。後任には樋口靖洋コーチ(50)が昇格する。今年はJ1の有力クラブの多くで監督交代があったが、年の瀬に名門クラブにも激震が走った。

 木村監督は段ボール箱を抱えながらクラブハウスの階段を下りてきた。「厳しい世界よの。(社長は)『求心力がなくなった』とか言ってたよ。(選手たちに)タイトルを取らしてあげたかった」と、ため息交じりに話した。契約期間を2年残しての電撃解任。「来年やろうと思っとったし、13年に集大成と。ええ勉強になったよ」と、最後は悔しさをかみ殺すようだった。

 前日29日の京都戦後に横浜市のクラブハウスで通達されていた。伝えた嘉悦社長は解任理由に「後半、パフォーマンスを落とした。残念ながらチームを立て直すことが出来なかった。このまま来季に突入するにはリスクがある」と説明。さらに「戦術面でシーズンを通して一貫したマネジメントが出来ていなかった。得点力を期待して招聘(しょうへい)したが改善がなされなかった」と加えた。

 リーグ戦では前半首位に立つなど好調な滑り出しだった。だが9月24日の仙台戦(日産ス)を機に4戦、勝ち点3を奪えない状況に陥った。最終的には5位。ACL出場には天皇杯優勝しかなかったが、京都に敗れ終戦。同社長は「天皇杯で劇的な変化、チームの雰囲気が変わることがあればと思っていた」とし、解任がこの時期に至った背景を説明した。だが、リーグ後半の失速が理由なら、天皇杯を待つまでもない。

 新監督には樋口コーチの昇格が決まった。同コーチは「攻撃面、攻守においてイニシアチブを取っていかないと」と方針を示した。内部昇格で劇的な変化をもたらすのは容易ではないはずだ。またACL出場を逃した場合の辞任を示唆していた嘉悦社長は「スポンサー、株主、行政の首長から『辞めることがあなたの責任ではない』と。責任放棄になる」と役員報酬50%をカットし、続投する。

 震災の影響もあり、観客動員は昨季に比べ1戦平均約15%落ちている。年の瀬に起きた名門クラブ指揮官の電撃解任。魅力あるサッカーを取り戻せるか。【今井貴久】

 ◆樋口靖洋(ひぐち・やすひろ)1961年(昭36)5月5日、三重県生まれ。四日市中央工から80年に日産自動車(現横浜)入り。85年に引退し、同クラブのスクールコーチ、ユース監督、トップチームのコーチなどを経て06年に山形の監督に就任。08年大宮、09年横浜FCの指揮を経て、10年から横浜にコーチとして復帰した。