完封劇で恩返しだ。J2山形DF石井秀典(26)が、昨季まで山形で指揮を執った小林伸二監督(51)率いる徳島との対戦を心待ちにしている。同監督が就任した08年に明大から新加入し、1年目からセンターバック(CB)のスタメンを獲得。“小林山形”の象徴となるまでに成長した。ホームNDスタに恩師を迎える24日の初対決を前に「どんな展開になるか本当に楽しみ」と、早くも待ち切れない様子だった。

 大恩ある小林監督を敵として迎え撃つ。大一番を4日後に控えた20日、石井は主力組の一員として軽めの調整。中3日で3戦をこなした連戦の疲れをいやしつつ、徳島戦への英気を養った。「(敵将として対戦することは)初めての経験。でも徳島がやっているのは、僕らが去年までやっていたサッカーに似ているし、どうなるかはわからないけど楽しみ」。2連休明けにもかかわらず、しっかりと頭を使ってイメージを膨らませていた。

 新人時代の08年に小林監督も山形へやってきた。右も左もわからぬプロ生活。その最初の指揮官が小林監督だったことは、石井にとっては大きかった。Jリーグの監督としては珍しく、選手の手を取り足を取り指導する熱血漢に、今では「プロは何でもできて当たり前だと思っていたから、新人の時にいろいろ教えてもらえてありがたかった」と感謝の気持ちを抱く。一方の小林監督も、在任時には「石井は教えたことを理解する能力が高いし、一生懸命やる」と評価。持ち前の吸収力で、CBとして「小林流=堅守」の代名詞となるほどに力をつけた。

 細やかな指導を受けた分、対策は立てやすくなった。戦略家としても名高い小林監督のミーティングを想像して「『(石井は)プレスに弱い。そこを狙え』とか言ってるんじゃないですか」と自己分析。すでに注意すべきポイントは押さえている。良くも悪くも全てを知られている存在。「恩師だし本当に感謝しているし、いいゲームができれば」。試合に私情を持ち込むことはないが、恩義を胸に「小林徳島」を完封する。【湯浅知彦】

 ◆小林監督とモンテディオ山形

 福岡(当時J2)の強化部長を解任された07年秋、次期監督を探していた山形のオファーを受けて監督に就任。08年は守備重視の戦法がチームとマッチし、就任1年目にJ2で2位。クラブ史上初のJ1昇格を成し遂げた。09年は得点力不足に悩み、15位に終わった。元日本代表FW田代(現J1神戸)や、MF増田(現J1鹿島)を補強した10年は、安定した成績を残して13位。しかし両者の抜けた11年は攻守にほころびが生じ、最下位でJ2転落。引責辞任した。同年冬、徳島監督に就任。