清水のFW大前元紀(23)がサッカーを始めた時から抱いていた1つの夢をかなえた。昨年12月6日、ドイツ1部のデュッセルドルフへの移籍が決まり、正式発表された。08年の入団から5年間、清水でつかんだ確かな手応えを胸に挑む海外挑戦。世界ではばたく若きストライカーに、新天地での決意や、新たなフィールドでの目標を聞いた。

 -移籍が決まった時の率直な気持ちは

 大前

 サッカーを始めた時から「海外で活躍したい」というのは1つの夢でしたから、素直にうれしかったですね。ただ、自分がこういう挑戦ができるようになれたのも清水での5年間があったからだと思うし、その清水で自分は何も成し遂げられなかった。そのまま出て行くということに、複雑な思いもありました。

 -そんな思い入れの強い清水を離れ、なぜ海外挑戦を決意したのですか

 大前

 単純にもっとサッカーがうまくなりたい、その気持ちだけですね。そう簡単にこういうチャンスが巡ってくるわけではないし、やれる自信もあったから決意しました。岡ちゃん(現シュツットガルトで日本代表のFW岡崎慎司=26)がドイツに渡って成長している姿を見ていたことも大きかったですね。

 -清水に在籍した5年間で成長できた部分はどこですか

 大前

 ボールを持っていない時の動きですね。今季もトシ(FW高木俊幸=21)からのボールをダイレクトで決められたことが多かったイメージがある。それは、点を取らなきゃいけないFWとして相手にとって危険な場所に入っていけてる証拠だし、ドイツでも清水で成長できた部分をどんどん出していきたいですね。

 -現在、多くの日本人が活躍するドイツでのプレー。プレッシャーは

 大前

 岡ちゃんをはじめ、これだけ日本人の選手が活躍しているから、昔のように「日本人でしょ?」みたいなイメージはもうないと思う。サポーターの見る目も当然、甘くはないと思う。でも、それは全然プレッシャーにはならないし、その中で自分もできる自信があったからこそ行く決断をした。だから楽しみの方が強いし、今は「やらなきゃいけない」っていう気持ちしかないです。

 -具体的な目標はありますか

 大前

 リーグ後半戦からの出場になるけど、他の日本人選手の誰よりも多く点を取ることですね。助っ人としてドイツに行くわけだし、求められるのは当然、目に見える結果になる。しっかり自覚を持ってやりたい。自分を成長させてくれた清水の名に恥じないように、とにかくゴールにこだわっていきたいです。

 -1つの夢がかないました。次の目標はありますか

 大前

 やっぱり、サッカー選手である以上、日本代表は意識しますね。今の代表は、海外で活躍している選手が中心になっている。岡ちゃんともポジションが同じなわけだし、自分の方が上だと証明するしかない。代表に入るためにはその選手たちを越えることが、一番の近道だと思う。そのために努力を惜しむつもりはないし、自分が今描いている未来を実現するためにも日々、精いっぱいプレーしていきたいと思います。【構成・前田和哉】

 ◆大前元紀(おおまえ・げんき)1989年(平元)12月10日、神奈川県生まれ。08年流通経大柏から入団。J1通算80試合23得点。166センチ、68キロ。家族は夫人と3男。血液型O。