<J1:東京3-1名古屋>◇第7節◇20日◇味スタ

 今度ばかりは、“手”も足も出させなかった。後半14分。東京FW渡辺千真(26)はDF徳永のボールを受けると、ゴールめがけて右足を振り抜いた。名古屋DF闘莉王の腰をかすめながら吸い込まれたゴールは、ダメを押す3点目。5試合ぶりの勝利を大きくたぐり寄せた。「シュートのイメージは出来ていた。スペースもあったし、ゴールも見えていた。『今度は』しっかり得点できてよかった」と、含みを持たせる笑みで言った。

 渡辺だけじゃなく、敵も味方も目を疑う「スーパーセーブ」は、1点ビハインドの前半40分だった。速いパス交換で右サイドを打開。DF森重の右クロスのこぼれ球を、ゴール正面で拾った渡辺が右にコントロールして、得点への道筋をつくった。ゴールは見えていた。だから敵のいない右隅を狙った。だが、右足で放ったシュートに反応したのは、GK楢崎ではなく、その前にいた闘莉王。左に横っ跳びし、左手のパンチングではじき返した。

 明らかなハンドにも、主審はまさかのノーホイッスル。東京側の猛抗議は実らず、PKも故意のハンドに対する退場処分も下されなかった。試合中、闘莉王は東京の選手に「倒れながらだから」と弁解。しかし、相手の楢崎も試合後に「ハンドを見逃された」と認めたシーンだ。東京関係者からは「セービングというよりは、バレーボールのレシーバーのようだった」という声も漏れた。ただ、その後はお返しとばかりに、東京がPKを2度も得て逆転。J史上2位タイとなる両軍合わせて12枚の警告が飛び交うほど、後半は大荒れとなった。

 失われた1点を取り返した渡辺は「あそこでハンドを取られないように決められるようにしたい」と、殊勲のコメント。得点ランクも首位に1ゴール差とし、チームの連敗を阻止した。【栗田成芳】