<J1:川崎F2-1新潟>◇第13節◇25日◇等々力

 川崎FのFW大久保嘉人(30)が、亡き父を弔う2ゴールでチームを勝利に導いた。ホームの新潟戦で先制点に加え、後半35分に鮮やかな決勝点を奪った。12日の父克博さん(享年61)の死去後、初得点。23日に発表された日本代表には選出されなかったが、ザッケローニ監督(60)が視察した一戦での2発で、今季リーグ戦12試合8得点と量産モードに入った。

 チームの勝利のためだけに集中していた点取り屋の脳裏を一瞬、父の姿がよぎったのだろう。「(2得点は)良かった。試合前は(父親のために)点を取りたい気持ちがあったし、ずっと思っていた。試合中は忘れていたけど、得点した後に少しだけ思い出した。ホッとしました」。大久保は柔らかな笑みを浮かべた。

 天性の嗅覚を見せつけた。1-1で迎えた後半35分。中盤でMF中村にパスが渡った瞬間に動きだした。「憲剛さんがどこに出してくれるかなと思ったら、もうパスがここ(足元)に見えた。決めて下さいというのが伝わった。俺はDFを振り切ることだけに集中した」。相手DFの間で中村のスルーパスを受けると、右から詰め寄るDFを右腕でブロックしながらGKの動きを外すと左足を振り抜き、決勝点を流し込んだ。

 先制点となった1点目もMFレナトがゴール前に送り込んだボールを「オフサイドになったら、レナト、ごめんという感じ」というギリギリの飛び出しで押し込んだもの。「良いパスが多く出てくる。自分がどうこうではなく、周りのおかげ」と謙遜するが、早くもリーグ戦12試合8得点と量産態勢に入っている。

 12日に父克博さんを亡くした。18日の磐田戦、22日のナビスコ杯湘南戦はノーゴール。「どこか尊敬していたところがある。面と向かっては言えないけど、死んだ今だから分かりますよね」。父親のためにも「早く決めたい気持ちはあった」と本音を明かした。その思いが現実のものとなった。

 日本代表ザッケローニ監督が視察に訪れる中、11日のC大阪戦に続き「御前試合」は2試合連続の2ゴール。リストアップはされたものの23日発表の代表メンバーからは漏れた。だが、実力は指揮官の目に焼き付いているはずだ。

 終盤に足のけいれんのため途中交代したが、試合後は勝利の喜びをサポーターと分かち合った。「結果を出せば(代表招集も)ありうるでしょうし、俺はやり続けていく。それくらいしかできないので」。亡き父のため、チームの勝利のため、そして…。多くの思いがこもった2発だった。【菅家大輔】