J2札幌がMF上里一将(27)に来季契約延長のオファーを出したことが12日、分かった。上里はJ1クラブから今夏の完全移籍を打診されていたが、札幌のコンセプト、ビジョンに賛同し、オファーを受けず残留を希望。大筋で合意しており、リーグ16戦を残して早くも来季戦力1号が内定した。09年のMF西、10年のMF藤田らJ1からのオファーはほぼ戦力流出につながっていたが、その流れを断ち切った。

 札幌の魅力が、J1の誘いに勝った。関係者は上里へのオファーについて「かなりいい条件だったが、本人が残ることを決断した。その(残留)方向で詰めている」と明かした。16日が今夏の登録ウインドーの締め切り日。主力ボランチ流出の危機だったが、目前で回避した。札幌は今季限りだった契約を延長する条件を提示。大筋で合意に達しており、J1昇格を想定した14年度の戦力確保に乗り出した。

 クラブ側が目指す将来像と、上里が描くビジョンが合致した。財前監督の指導の下、中盤を軸にボールをつないで崩すスタイルを続け、そこをベースにレベルアップを図るのが基本線にある。その中でゲームのコントロール役となるボランチの存在は不可欠。三上大勝GM(41)は「うちの基本的なコンセプトや将来への展望を説明し、上里自身も成長につながると感じてくれた」と話した。

 主力流出が続いていた最近の動向から、状況が変わりつつある。09年にMF西、10年にMF藤田がJ1新潟からオファーを受け、財政難が続く札幌は契約金などの条件面で勝てず、次々と手放していった。11年オフには昇格を果たしながら、DF山下がC大阪に移籍した。今回はリーグ16戦を残しての早期オファー。上里も将来的にJ1でのプレーを熱望する選手の1人だが、あくまで札幌での昇格と定着を希望し「J1オファー=即移籍」という流れを断った。

 現在8位のチームを支える軸。ボランチとして、フィールドプレーヤー最多タイの24試合に出場し、11日の横浜FC戦ではクラブ記録のホーム5戦連続完封勝利に貢献した。視野の広さを生かした展開力と、左足のキックはJ1でも通用する。今季のプレーオフ進出や、昇格、J1での飛躍に向けたキーマンとなりそうだ。

 ◆上里一将(うえさと・かずまさ)1986年(昭61)3月13日、沖縄・平良市(現宮古島市)生まれ。平良南小1年でサッカーを始める。平良中、宮古高を経て04年に札幌入りし、宮古島出身初のJリーガーに。11年東京、昨季は徳島に期限付き移籍し、今季から札幌に復帰。初出場は04年5月19日水戸戦、同初得点は05年5月21日湘南戦。J1通算12試合無得点、J2通算218試合15得点。172センチ、70キロ。左利き。血液型A。