<J1:鳥栖1-0磐田>◇第31節◇10日◇ベアスタ

 リーグ年間優勝3回を誇る磐田が、鳥栖に敗れ、クラブ史上初のJ2降格が決まった。今季は開幕から出遅れ、6月から関塚隆監督(53)に再建を託した。7月に上向きかけたが、流れをつかむことができず、残り3試合を残して陥落した。クラブは既に来季に向け関塚監督に続投を要請。加藤久氏(57)を新GMに迎えるべく交渉を進めている。クラブは主力選手の慰留に全力を尽くすが、他クラブが狙う逸材がそろうだけに、厳しい冬の訪れとなりそうだ。

 パスサッカーで輝かしい黄金期を築いた名門が、J昇格20周年の年に佐賀の地に沈んだ。引き分け以下で降格の必勝の試合で、前半24分に先制された。終盤、GKまで攻撃参加させ、がむしゃらにゴールに迫ったが、1点は遠かった。降格を告げるホイッスルに、DF安田、菅沼駿ら選手が倒れ込み号泣した。残留を決めて喜ぶ鳥栖とは正反対の姿だった。日本代表伊野波もユニホームで顔を拭い、磐田サポーター席へと足を進めた。

 今季は開幕から出遅れ、6月から関塚監督が指揮を執った。腹心を連れず、単身で磐田に入る難しい状況の中、3バックでバラバラになった選手間の距離や、決定力不足を解消すべく練習に取り組んだ。リーグ再開後は、4戦負けなしと一時は上向いたが、先制しても勝ち切れない。悪い流れは断ち切れなかった。関塚監督は「歴史のあるジュビロの降格が決定してしまった。立て直しができなくて申し訳ない。責任の重さを感じている」と謝罪した。

 磐田一筋のエースFW前田は後半14分に途中交代し、ベンチで降格を見詰めた。「残念です。結局は力がなかったからだと思います」。来季はW杯が控える。前田にとって大事な年だが、来季については「今は何も分からないです。取りあえず、W杯なんて今、僕が口にできる言葉ではないと思います」と言った。MF山田は「しっかりとこの屈辱、痛みを胸に刻まないと。いい経験にする建前では済まされない」と言葉を絞り出した。

 クラブは来季へ、既に関塚監督に続投を要請し、同監督に決断を委ねている。服部GMは退任する予定で、新GMに関塚監督と同じ早大卒の加藤氏の就任を目指す。加藤氏が就任すれば、同監督の慰留が最初の仕事となりそうだ。

 昨年、J2に降格したG大阪の主力選手は、降格直後にクラブに残留する宣言をした。この日、磐田の主力選手の大半は、来季に関して「シーズンが終わってからゆっくり考える」と即答はしなかった。磐田の高比良社長は「主力はかなり、チームに残ってくれると思っている。新しく補強をして、1年でJ1に戻る」と話している。主力選手の流出危機と向き合う、厳しい時期を迎えることになりそうだ。【岩田千代巳】

 ◆名門磐田

 J1で過去3度の優勝を誇る磐田の来季J2降格が確定。Jリーグ2年目の94年にJリーグに昇格した「2期生」が、20年目で初のJ2降格となった。J1でリーグ年間優勝を経験したことのあるチームがJ2に降格するのは、東京V、G大阪に次いで3クラブ目。磐田はナビスコ杯も2度、天皇杯も1度優勝しており、国内3冠タイトルは計6度。これは鹿島の16度(J1が7回、ナビスコ杯5回、天皇杯4回)、東京Vの7度(同2、3、2回)に次いで3番目に多い。