<J1:磐田0-1横浜>◇第32節◇23日◇ヤマハ

 横浜が、9年ぶりの栄冠に王手をかけた。後半24分にDF中沢佑二(35)の今季初ゴールが決勝点となり、1-0で磐田を振り切った。延長戦にもつれ込んだ天皇杯4回戦・JFL長野戦から中2日だったが、MF中村俊輔(35)らが自発的に行ったミーティングで気を引き締め、「ハマの底力」を見せつけた。2位浦和との勝ち点を4差とし、次節30日ホーム新潟戦(日産ス)で勝てば、04年以来のリーグ優勝が決まる。

 体が重い。太ももが張る。それでも、最後の1秒まで全力プレーを貫いた。試合終了の笛が鳴ると、横浜のほとんどの選手が最後の力を振り絞り、両手を空に突き上げた。

 決勝弾は35歳のボンバー中沢だ。後半24分、MF中村の左CKをFWマルキーニョスがヘディング。GK八田がはじくが、ファーの右サイドにいた中沢がすかさず飛び込み、左足で押し込んだ。中沢の気持ちを表すように、ボールが突きぬけんばかりにネットが伸び切った。32試合目にして、今季初得点。「ゴールを取るためにやってるわけじゃないけど、こういうのもないとフィジカル練習もやってられない。ご褒美だね。これがサッカーなのかな」。満足げに振り返った。

 先発の平均年齢は31・4歳。35歳以上のアラフォーは4人いる。しかも、3日前の天皇杯は延長戦にもつれ込み、大半の選手が120分プレー。胆のう炎から復帰した中村も後半途中から61分も走り続けていた。それでも、20歳代が多い磐田相手に13本のシュートを浴びせ、逆に相手シュート数を2本に抑え込んだ。最後までペースを握った。

 体を動かしたのは気力だ。前夜、静岡県内のホテルでの夕食後、中村とFWマルキーニョスの呼び掛けでミーティングを行った。37歳のマルキーニョスが、前節名古屋戦と天皇杯で苦戦した原因を「みんなもう優勝したかのような気分でいる」とバッサリ。「疲れたなんて言ってられない」と珍しく語気を荒らげた。中村も「自分がレジーナやセルティック、南アフリカ(W杯)でも感じたように、チームが1つになるのはなかなか経験できない。頑張って最後にてっぺんにいれば、若い子はいい経験になる」と、自身の経験を交えてやりがいを訴えた。

 次戦で新潟に勝てば最終節を残し優勝が決まる。シーズンの疲れが出てくる頃だが、栄冠は目前。王手弾の中沢は「ホームやれるなんて、こんな最高なことはない。自分たちで作った舞台で最高の結果を得たい」と必勝を誓った。ハマのおじさん軍団は、最後の最後まで若々しく走り抜ける。【由本裕貴】