始動3日目で“アーニー流”が見えてきた。仙台が20日、初めて戦術的メニューを取り入れた練習を行った。フィジカル中心だった前日までとは一転、グラハム・アーノルド監督(50)が約1時間にわたって意識統一を徹底。新指揮官の意図を感じさせる内容に、選手たちも刺激を受けていた。

 低く大きな声で出される指示に、目指す守備のスタイルが明確に表れていた。「ゴール(を見ろ)!」「ポジション(に戻れ)!」。昨年までは前線から積極的にボールを奪いに行ったが、アーノルド監督はゴールを守るための陣形を整えることを最優先。FW赤嶺は「守備の部分が全然違うし、新鮮ですね」と刺激を受けたようだった。

 戦術を落とし込む方法もユニークだった。練習開始前、監督自ら大量のパイロンを並べた。ピッチの3分の1ほどのスペースに、2本1組にした計11セットを4列に配置。内容はゲーム形式だった。ルールは1人2タッチ以内でボールをつなぎ、味方同士でパイロンの間にパスを通せば1点。簡単そうにも思えるが、呼吸が合わなければ狭いスペースで最後のパスはつながらない。「コミュニケーションが大切。どんどん話そう」と最も重要視する意識の統一を図った。

 もう1つの目的は“頭脳”の強化だ。10人ずつに分かれた選手に対し、ゴールは指揮官が並べた11個。1つ余る標的をどう攻め、どう守るかを考えさせた。プロ10年で代行を含めて9人の監督から指導を受けてきたDF石川直は「初めてやったパターン。攻撃も守備も連動するという理論を持ったやり方だし、試合につながると思う」とうなずく。

 研究熱心な指揮官は、現役時代から積み重ねてきた経験がつまった大量の資料を持ち込んでいる。この日の練習後にはコーチ陣を集めて“講義”も行った。石川直は言う。「どういうサッカーをするか少しだけ見えたけど、頭を使うことが多い気がする」。監督が持つ勝利へ導くための引き出しは、これから次々と開かれていく。【鹿野雄太】