仙台MF武井択也(28)が、激しいボランチの定位置争いに名乗りを上げる。鹿児島キャンプ2日目の27日、G大阪から加入した守備職人は、正確なシュートとパスで攻撃センスも披露。日本代表MF遠藤ら“黄金の中盤”の中でしのぎを削ってきた高い能力を証明した。

 今季初のシュート練習で、誰よりもゴールを陥れたのは武井だった。強く正確な縦パスを前線に送り、返ってきたボールを冷静にダイレクトでサイドネットへ流し込む。始動から10日間で、日を追うごとに存在感が増している新戦力は「ガンバより練習はキツイけど、集中して激しい時間を過ごしている。少しずつ良いプレーができてきた」と強烈なアピールを続けている。

 G大阪では代表クラスの技を肌で感じてきた。自らを「守備的なタイプ」と分析するが、指導を受けた西野監督(現名古屋)には「守備だけじゃダメだと言われてきた」と振り返る。チームの中盤には遠藤、二川、明神という代表クラスのお手本がいた。タイプは全員違う。「いいとこ取りすれば完璧な選手になれる」。武井はシュートやパス、裏への飛び出しまで、あらゆる攻撃の武器を身につけてきた。

 オールラウンドに高い能力を発揮するが、守備へのこだわりは忘れない。「一番は対人の強さ」と言うように、キャンプ前から中盤で厳しいプレッシャーをかけるシーンが目立った。この日のシュート練習後に行った5対5の実戦形式のメニューでは、アーノルド監督(50)から「タケイの守備が見たい」と名指しで注文を受けるほど期待は高い。

 幼稚園年長から小4まで仙台市に隣接する富谷町で育った。昨年11月には第1子の長女も誕生した。昨季は出場機会に恵まれなかった雪辱にも燃えている。「監督も代わったタイミングで来たので、ポジションを取って勝利に貢献したい」。角田、富田を中心とした定位置争いに割って入るのか。移籍1年目の武井が、アーノルド仙台のキーマンになる可能性は十分だ。【鹿野雄太】

 ◆武井択也(たけい・たくや)1986年(昭61)1月25日、栃木市生まれ。幼稚園年長から宮城県富谷町に移り、富ケ岡小1年からサッカーを始める。4年で栃木に戻り、東陽中、国学院栃木高、流通経大を経て08年にG大阪に入団。10年からレギュラーをつかみ、11年にはリーグ33試合に出場した。今季から仙台に完全移籍。家族は夫人と1女。179センチ、72キロ。