仙台MF菅井直樹(29)が宮崎・延岡キャンプ9日目の11日、親友の無念を自分のことのように悔しがった。10日夜から11日未明に行われたソチ五輪スピードスケート男子500メートルで、山形中央高のクラスメートだった加藤条治(29)がまさかの5位。あらためて勝負の世界の厳しさを痛感し、プロ12年目のシーズンに臨む。

 信じられなかった。普段と変わらず黙々と練習に取り組んだ菅井が、沈んだ声で胸の内を明かした。「残念でした。ショックですね…」。深夜のレース開始に合わせて目覚まし時計をセットし、宿舎で祈るように加藤の滑りを見守った。結果はまさかの5位。「ショックで寝つけなかった」。4年前のバンクーバー五輪銅メダルから頂点だけを目指してきた親友の努力や思いを知るだけに、朝のニュース映像を見ても現実を受け止められなかった。

 同じアスリートとして励まし合ってきた。出会いは14年前。ともに山形中央高の体育科に入学し、意気投合した。2、3年時はクラスメート。卒業後も親交は続き、頻繁に連絡を取り合って互いの活躍を刺激に一線で戦ってきた。だからこそ悔しさは痛いほどわかる。「結果については連絡してない。今は何も語りたくないだろうし、言われたくないと思うから。そっとしておきます」と気遣った。

 毎年のようにケガに悩まされている菅井も、今キャンプはここまで1度の離脱もなく順調に過ごしている。だが、06年から君臨する右サイドバックのポジションが保証されているわけではない。鹿児島キャンプでは控え組でプレーすることが多く、実戦で1本目に起用されたのは8日の大分戦が初めてだった。その後は主力組で練習を重ねているが「メンバーの入れ替わりが激しいので、きっちり連係を確認しながらやりたい」と、今日12日のJ2長崎との練習試合へ気を引き締めた。加藤と同じ勝負の世界に生きる男として前を向き、走り続ける。【鹿野雄太】