最初から最後まで、葛藤しているようだった。FW川又堅碁(24)の新潟から名古屋への移籍が12日、両クラブから発表された。新潟・聖籠町のクラブハウスで会見に臨んだ川又は、複雑な胸中を語った。「この(会見の)場でどういう風に言ったらいいか分からない。でも、すごく悔しいっすよね。この感じで新潟を離れるのは…」。時折考え込みながら、頭の中で言葉を選んでいるようだった。きわどい質問には誤解を招かないよう「難しいっすね」と、グッとのみ込んだ。

 本音は「今季最後まで新潟にいるつもりだった」。契約延長の話こそ断ったが、チームの目標でもある来季のACL出場圏内(3位以内)に入れば、来季も残留する意志は伝えていた。前半戦3点に終わり「後半戦は10点以上取るつもりでキャンプに臨んでいた」。だが再開後、ベンチにも入れず「飯食って、寝て、忘れるしかないと思っていた。でも正直言うとできていなかった」。疑問が簡単に晴れるはずがなかった。

 「試合に出てゴールを決めたい!」。そんな思いに「新潟でやればいい」という安直な意見とは別次元での問題の間で、悩み抜いた決断だ。移籍金は推定2500万円。これは、新潟では試合に出られない現状を考え、移籍しやすく設定したクラブ側の優しさであり、海外市場に比べれば少額だが川又が新潟に残した感謝の形でもある。

 会見終え去り際に「なんかこういうのは面白くねぇな」とこぼした。ゴールを決めたときも、不発だったときも囲まれていたストライカーの、悲しい退団会見だった。【栗田成芳】