<J1:鹿島2-2東京>◇第22節◇30日◇カシマ

 日本代表に初選出された若武者がゴールを決めた。東京FW武藤嘉紀(22)は2点を追う展開から後半4分にPKを誘発し、終了3分前には同点弾。今季8得点目で、得点した試合は6戦無敗と慶応ワンダーボーイは鬼門の鹿島戦でも輝いた。

 「ここにこぼれてくれたら!」。そんな武藤の貪欲な思いが現実となった。後半42分。ゴール前混戦で体を張るFW渡辺に混乱する鹿島守備陣を見抜いた。「まさかあんないいところにこぼれてくるとは」。後方から勢いよく飛び込んだ武藤は右足でゴール。土壇場で追いつき、チームの連続不敗は10に伸びた。後半途中から相手は10人。反撃の条件は整う中、ゴールという結果を残したのは、貪欲な姿勢があったからだ。

 「何が何でも泥臭くやることを心がけている」。反撃ののろしも武藤の1プレーから生まれた。後半4分。MF米本から裏への浮き球パスに反応し、相手DFのファウルを誘い出した。足を伸ばして懸命にコントロールしたところにタックルを受けてPK獲得。これをFWエドゥーが決めて1点差とし、自らつくりだした反撃ムードに乗って決めた同点弾は、見た目とは裏腹に泥臭く、貪欲に狙った結果だった。

 これで今季8点目とし、元日本代表MF中田英寿氏に並んだ。当時まだ3歳だった武藤が、海外で活躍したレジェンドの姿を見ていたのは、まだ小学生。当時から憧れだった代表入りをかなえ、明日9月1日に合流する今、対面を心待ちにするのはACミランMF本田だという。ここでも貪欲さを忘れない。

 「代表はみなさん憧れの選手ばかり。よく見ていいところを盗みたい。(中でも)やっぱり本田選手は、高校の頃からの憧れの人。足を引っ張らないようにしたい」

 選ばれるだけでは満足しない。さらなる成長が大きなモチベーションになっている。注目度は一気に上がった武藤がボールを持つと、鹿島スタンドからブーイングが生まれたが、モノともしなかった。「感覚を研ぎ澄ませていた。けがもないし、萎縮することなく代表に行きたい」。初めての代表を前に輝いた。【栗田成芳】

 ▼新人のJ1年間得点記録

 プロ1年目の東京FW武藤が今季8ゴール目を決めた。新人年のJ1リーグ戦ゴール数で、95年の元日本代表MF中田英寿(当時平塚)らが記録した8ゴールに並び歴代5位タイに浮上した。リーグ戦は残り12試合。東京の先輩FW渡辺が横浜在籍時代の09年に記録した新人年間最多13点を更新しそうな勢いだ。