日本代表の東京FW武藤嘉紀(22)が、原点回帰してJリーグモードに入る。明日13日の神戸戦(味スタ)に向けて11日、東京・小平市内のグラウンドでの全体練習でフルメニューをこなした。今季8ゴールを決めているチーム得点王の先発は確実。9日の日本代表のベネズエラ戦でのゴールで注目度が急上昇したが、小学生のころに泣きながら走ったという特訓に思いをはせ、足元を見詰め直した。

 一回り磨き上げられたような、切れ味鋭いドリブルを披露した。実戦形式のミニゲームで武藤は、左サイドからゴリゴリ切れ込んだ。10日間の日本代表合宿の疲れを見せるどころか、国際舞台を経験し、動きはさらに研ぎ澄まされていた。「天皇杯に敗れたことで、あとはリーグ戦しか残っていない」。ゴールを決めたベネズエラ戦から中3日で迎える神戸戦に照準を合わせていた。

 神戸MF森岡には、代表合宿中に「東京とやりたくないんだよな~」とやんわりとけん制されたというが、「前線の選手が強力。先制点を取らないといけない」とキッパリ。2人で19発を決めているFWペドロ・ジュニオール、マルキーニョスのコンビに負けじと、代表戦同様に先制パンチを浴びせるつもりだ。決めればリーグ3戦連発。目標である2桁得点がはっきりと見えてくる。

 日本代表の活躍で一躍時の人となったが、足元を見詰め直すことは忘れない。日本代表としての活動期間中、小学校時代に所属したバディSCの恩師と連絡を取り合っていた。激励に「ありがたい」と感謝しながら、当時の厳しい練習を思い出した。「ひよどり山(八王子市)の坂道を泣きながら走ってました。1キロくらいの距離を8本とか。それが1日だけじゃなくて3日くらい続く。小学1年からだから、本当にきつくて、よく泣いてました」と振り返る。

 しかし、そんな「泣きながら」の特訓が、今の豊富な運動量とスピードにつながっている。「今、プロの世界でやっていこうとできているのは、あのときがあったから」。東京で活躍しても、代表でゴールを決めても「泥臭く」「謙虚に」と言い続ける。涙にぬれた原点に思いはせて、Jの舞台に戻る。【栗田成芳】

 ◆ひよどり山

 東京・八王子市にある標高約150メートルの山。86年に都立小宮公園として開園。園内はコナラ、クヌギなどの雑木林におおわれている。