<J1:東京1-1神戸>◇第23節◇13日◇味スタ

 日本代表の東京FW武藤嘉紀(22)が、Jリーグ仕様で先制点の起点になった。前半23分、左サイドにあるスペースを突いた。サイドへ流れるような動きからボールを受け取ると、今度は鋭角にゴールめがけてドリブルを開始。しかし猛然と突っかける勢いは見せかけだった。

 相手の注意を引き付けた上で、ニアサイドに突っ込むFW河野の後方で待ち受けるFWエドゥーへマイナスクロス。時間的猶予を与えたエドゥーのシュートからPKを獲得し、それが先制点となった。

 ドリブルからシュート。武藤が一躍「時の人」となったベネズエラ戦で見せた形だが、この日はドリブルからパスを選択。その狙いはこうだ。

 「代表戦では僕は無名。だから相手もパスを出すと予測する。でもJでは僕がドリブルをしたとき、シュートにくると相手は思う。寄せてくることは分かっていた。そこにかけてくるDFの逆手をとった」

 単純なことを簡単に言っているが、相手の狙いを読み取った上で逆を突くしたたかさが、このプロ1年目、22歳の恐ろしいところ。武藤はよく口にする。「相手をよく見る」と。単純な「勢い」や「ノリ」だけでプレーしていない。派手さのあるドリブルやシュートをクローズアップされがちだが、その武器を「おとり」にしたプレーが、Jの舞台で飛び出してきそうだ。【栗田成芳】