<J2:京都2-2湘南>◇第33節◇23日◇西京極

 「湘南の暴れん坊」が、史上最速でJ1昇格を決めた。引き分けでも昇格の決まる湘南はアウェーで京都と対戦。1-2とリードされた後半39分、DF島村毅(29)の豪快なミドルシュートで追いついて引き分けに持ち込んだ。湘南は勝ち点を84とし、同56の3位磐田が水戸に1-4と敗れたために自動昇格となる2位以内が確定。残り9試合での決定は、Jリーグが2部制になった99年以降最速。湘南は来季、チョウ・キジェ監督(45)と選手たちが築いた「攻撃サッカー」で2年ぶりのJ1に挑む。

 後半39分、島村が左足を振り抜いた。「練習もしない」という25メートルのミドルシュートがゴール左スミに突き刺さる。今季先発2戦目、それでも「常にゴールに向かう」湘南スタイルを貫いた。苦しい試合を引き分け、チームをJ1に導く一発。「最後に決められてよかった」と安堵(あんど)した。

 昇格は決めたが、チョウ監督にも選手にも笑顔はなかった。「内容的には京都の方が上」とMF永木主将。「90%は京都さんのゲーム」と話したチョウ監督は胴上げを拒否し「選手も(勝てずに)悔しがっていたから」と話した。

 試合前、チョウ監督は直前に終わった磐田の負けを選手に伝えていた。「あえて言った。選手は緊張したけれど」。島村は「1点取った後、安全に行こうとした」と話した。常にゴールを狙う湘南流ではなかったが、それでも追いつき、勝ち点1を狙って奪った。それも湘南の強さだった。

 今季、湘南はJ2に「革命」を起こした。相手を上回るハードワーク、常にゴールに向かう姿勢、球際の闘争心、基本的なことを徹底した結果、記録的な快進撃につながった。代表経験者もいない。平均年齢も25歳と若い。それでも、33試合で黒星は1つ。その強さで歴史さえ塗り替えた。

 試合前、チョウ監督はホワイトボードに「1968」と書いた。前身の藤和不動産サッカー部の発足年。初の元プロとしてセルジオ越後氏が加入し、後にフジタ工業となってからもFWカルバリオら破壊的な攻撃サッカーで日本サッカー界を席巻した。94年からJリーグに加わり、MF岩本輝雄、中田英寿らの活躍で「湘南の暴れん坊」と恐れられた。

 00年に市民クラブとして再出発。親会社もなく資金難に苦しんだ。今季の運営費は11億円、来季J1でも14億円と最低レベルだ。それでもチョウ監督は歴史を踏まえ「史上最強の湘南になろう」と声をかけた。「クラブのDNAが結実したかなと思う」と、記録的な快進撃を振り返って話した。

 選手は常にJ1を意識している。昨季、手ごたえを感じながら1年で降格したからこそ、今季はJ1基準で戦ってきた。だから他のJ2勢を圧倒できる。チョウ監督は「去年は試験はできたが不合格だった。今年は浪人。来年、合格するためにやっている」。史上最強を目指す湘南が、昇格でJ1の「受験資格」を得た。【荻島弘一】

 ◆湘南ベルマーレ

 94年にJリーグ入会。99年にメーンスポンサーのフジタが撤退。00年に市民クラブとして再出発し、現チーム名に改称。本拠地はBMWスタジアム平塚(収容人員1万5100人)。大倉智社長。<湘南記録アラカルト>

 ◆最速昇格

 9試合を残しての昇格決定は04年川崎Fの8試合を更新。日にち的にも、9月23日は08年広島と並ぶ最速記録。

 ◆開幕連勝

 14連勝はJ2新記録。これまでは00年浦和の8連勝。シーズンの連勝記録としても14は00年の札幌と並ぶ記録。

 ◆100勝ち点

 33試合で勝ち点は84。1試合あたり2・5点。このペースだと42試合で107。年間51試合の09年に仙台が記録した106を抜く。今季と同じ42試合の最多記録は08年広島の100。

 ◆最少失点

 33試合を終えて18失点。1試合あたり0・55点と驚異的な守備力だ。