<J1:東京4-0柏>◇第26節◇27日◇味スタ

 この男、進化が止まらない。東京の日本代表FW武藤嘉紀(22)が、ハビエル・アギーレ監督(55)が視察する中、2得点を決めた。柏とのホーム戦で前半4分に膝で押し込み今季10点の大台に乗せると、前半終了間際には技ありゴールで2発。今季11点とし、新人得点記録の13ゴールも現実味を帯びてきた。チームも連勝し、クラブ最多の14戦連続不敗記録を更新した。

 進化の途中にいる武藤は、ゴールだけでは終わらなかった。後半5分に中盤でボールを奪取。これを河野につないで、エドゥーの3点目が生まれた。前半に2得点の活躍。漂いだしたハットトリックの予感。それでも攻撃だけじゃなく守備にも力を注ぐ。しつこいハイプレッシャーから左足でカットし、試合を決める3点目につながった。「自分の得点もうれしいけど、陰で得点に絡めるのは自分の得点と同じくらいうれしい」。ゴールから遠く離れたピッチの中央で、1人ガッツポーズを決めた。

 もっとも、試合の主導権を握る2発は武藤から生まれた。前半4分にDF徳永の右クロスに、左膝で合わせる先制点であっさりと新人10得点を記録。前半終了間際には河野のスルーパスに抜け、飛び出してきた相手GKを、チップキックで上に抜く追加点を決めた。公式戦で決めれば負けない不敗神話はこれで9(7勝2分け)。ゴールとともに勝利ももたらす武藤の活躍を、代表指揮官も認めた。

 アギーレ監督は、試合後にニッコリと笑いながら「日々進化している武藤がよかった」と言った。初めて視察した浦和戦(8月23日)に続く2発で代表定着を猛アピールしたが、しっかりと届いたようだ。史上4人目となる新人2桁ゴールは十分なアピール材料。「14」という新人記録も、現実味を帯びてきた。

 入団当初、ここまでの活躍を想像できなかった。プロ契約を結び背番号を決める際、残り番号の14でさえ重かった。「まだ未知数だったから、自分がどこまでやれるか分からなかった。10番台はいい番号すぎるんじゃないか」。ただ、憧れの番号でもあった。東京のスクールに通った小学校時代、味スタのピッチでで目で追った佐藤由紀彦と同じ番号に、運命も感じ背負っている。

 09年に当時、横浜で13点を決め新人記録を持つ同僚のFW渡辺からは「早く俺の記録を抜けよ」とハッパを掛けられている。高まる期待と注目度に「プレッシャーはあるけど、楽しむように心がけている。1つ1つ積み重ねれば、背番号と同じゴールも見えてくる」。徐々に頭の中によぎり出した数字。そこ届いたとき、武藤はさらなる進化を遂げている。【栗田成芳】