今季で契約満了の川崎FのFW大久保嘉人(32)が11日、残留を表明した。3日に所属する川崎Fから、その後東京、神戸、C大阪からも条件提示を受けていた。回答期限のこの日、悩み抜いて出した結論は「残ります」。各クラブが年俸1億円以上を提示した争奪戦が幕を閉じ「スッキリした。これで寝られる」と笑顔で話した。

 川崎Fが提示した年俸約1億円は最も低く、他クラブより数千万円少ない。「毎日考えが変わる。人生で一番悩んだ。夜も眠れなかった」。初めは年俸が最も高く、プロ生活を始めたC大阪や、ゴール給を準備した東京に心が揺れた。新天地にチャレンジしたい気持ちも強かったが、後ろ髪を引かれる思いもあった。

 川崎Fでは昨季26得点で初の得点王、今季も15得点でランク首位タイと量産。W杯ブラジル大会にも出場した。FWは結果が全て。「点を取るならフロンターレ」とも話しており、完全復活へ導いてくれたクラブで恩返しがしたかった。「このチームを優勝させる」と公言し移籍してから2年。「あっという間。まだ、ここでやることがある」。前夜に家族と話し、心を決めた。最後は直感だった。

 優先順位は「最初は3番手」と話し、決して最初から川崎F残留ありきではなかった。大逆転で残留の意を直接伝えられた庄子取締役強化本部長は「一安心」と得点源の残留に安堵(あんど)していた。MF中村も「頑張ろう。よかった」と頬を緩めた。大久保は「ここでやるのもチャレンジ。あとは俺次第。点も取り続けたいし、ここで歴史に名を残したい」と意欲を見せた。【桑原亮】