<J1:浦和0-2G大阪>◇第32節◇22日◇埼玉

 3冠を狙うG大阪が劇的勝利を飾った。負ければ首位浦和の優勝が決まる天王山を勝利。終了間際に途中出場のFW佐藤晃大(28)とMF倉田秋(25)が連続ゴールを決めるなど長谷川健太監督(49)の采配が的中した。05年以来のリーグ制覇へ、残り2戦で勝ち点2差に再接近。既に優勝したナビスコ杯、準決勝まで進む天皇杯と合わせた3冠が見えてきた。

 歓喜の声は、悲鳴とため息にかき消された。満員の敵地。引き分けかと思われた後半43分だ。ゴール前へ走り込んできた佐藤が、FWリンスからのパスを右足で流し込んだ。待望の先制弾だ。浦和の優勝決定を期待して、真っ赤に染まった場内は異様な雰囲気に包まれた。たたみ掛けるように同ロスタイムには倉田が追加点。天王山で勝負を決めたのは、名脇役の2人だった。

 「うちは(ベンチ入り)18人、誰が出ても戦えるメンバーでしたけれども、浦和は17人だったんじゃないですか」

 長谷川監督の言葉は印象的だ。右足腓骨(ひこつ)骨折の興梠を半ば強引にベンチ入りさせた浦和に対し、G大阪は途中出場の佐藤と倉田が大活躍。敗戦が許されない緊張感の中、総合力でつかんだ白星だった。

 暗闇に光が差し込んだ。J1昇格1年目、前半戦は大苦戦した。5月17日の第14節東京戦を0-3で落とすと、J2降格圏の16位に低迷。当時は首位浦和とは勝ち点14差あり、残留争いさえ覚悟した。そこから5連勝、7連勝と破竹の勢いで上位に食い込んだ。チームと同様、殊勲の佐藤も苦労の連続だ。12年10月に右膝前十字靱帯(じんたい)を負傷し、丸1年を棒に振った。J2だった昨季はわずか5試合1得点。今季もこの日の得点がリーグ2点目だ。愛称パンチの優しき男はしみじみ言った。

 「絶対に点を取りたかった。ゴールは見ていません。感覚だけ。僕は全然、活躍していないのに、監督はベンチに入れ続けてくれた。いつか恩返しがしたくて、腐らずにやってきた」。私生活でいつも一緒にいるほど佐藤と仲がいい倉田も「期待に応えられて良かった」と胸をなで下ろした。

 残り2戦で勝ち点2差。長谷川監督は、重圧がかかるのは追うG大阪ではなく、追われる浦和だと言わんばかりに「ナビスコ杯を取って、3冠の呪縛から解き放たれた」と言う。降格圏からの大逆転Vへ。G大阪の勢いはもう、止まりそうにない。【益子浩一】