<J1:鳥栖1-1浦和>◇第33節◇29日◇ベアスタ

 優勝へ王手が一転、自力Vが消滅-。首位浦和が、4位鳥栖と痛すぎる引き分けに終わった。後半24分、MF阿部勇樹(33)のPKで先制するも、10人の相手に後半ロスタイムに追い付かれた。2位G大阪が神戸に3-1と快勝したため、両チームは勝ち点62で並び、得失点差で7上回るG大阪が首位に立った。2位へ転落した浦和は、最終節の名古屋戦に勝ってもG大阪の結果を待つしかなくなった。

 悪夢のような光景だった。後半49分。簡単に与えたCKが致命傷となった。MF柏木陽介(26)が鳥栖DF小林のマークにつき切れずにいると、あっさりCKを頭で合わされた。日本代表GK西川周作(28)も見送るしかなかった。規定のロスタイム4分も回っており、2点目を挙げる気力も時間も残っていなかった。

 終了の笛が鳴ると、フィールドプレーヤー10人全員がピッチに座り込み、倒れ、突っ伏した。終了まであと1プレー。CKをはね返せば今季17試合目の完封、そして勝ち点差2のままで最終節を迎えるはずだった。だが最後の最後に信じられない結末が待っていた。

 ペトロビッチ監督(57)は「今の状況で試合後のコメントをするのは非常に難しい。前節のG大阪戦は後半43分、そして今回は後半49分。終盤に失点をするのは厳しく、痛いものだ」。右手で顔を何度も覆い、目元をぬぐった。通訳をする杉浦大輔コーチは何度も声を詰まらせた。選手だけでなく、スタッフもショックを隠せなかった。

 ハーフタイムの時点で、同時刻開始だったG大阪は2点をリードしていた。DF槙野は「知っていた」と話したが、DF森脇は「知らなかった。ガンバどうこうよりも自分たち次第だと思っていた」。足並みは微妙にずれていたのかもしれない。前節G大阪戦後から鳥栖戦の間に練習場を訪れたクラブスタッフは「妙に元気が良すぎる」と、チームの微妙な違和感を覚えていた。盛り上げようとする空気がカラ元気に映った。26日には選手だけで昼食会を行ったが、勝ち点3につながらなかった。

 後半24分にFW李が倒されてPKを獲得した。同時に鳥栖DF菊地がレッドカードで1発退場。阿部がPKを沈め、運は向き、優勝への機運は高まったはずだった。同38分にDF永田を投入し、1分後に決定機を決め切れずにいると、状況は一気に悪くなった。10人の鳥栖から放り込まれるロングボールに、DFラインは下がり続けた。2点目を決め切れず、単純に守りに入れば決壊は必然だった。

 勝ち点62でG大阪と並ぶが、得失点差で7も劣る。最終節は浦和が名古屋との対戦で、G大阪は最下位の徳島。数字上は可能性を残すが、条件を考慮すれば8年ぶりの優勝は完全に遠のいた。李は「勝って奇跡を待つしかない」。一時は勝ち点7差で独走態勢に入った浦和だが、まさかの厳しい現実を突きつけられた。【高橋悟史】