<J1:徳島0-0G大阪>◇最終節◇6日◇鳴門大塚

 G大阪が史上最大の大逆転劇で、9年ぶり2度目のリーグ制覇を達成した。運命の最終節は、最下位徳島に敵地で引き分け。同じ勝ち点62で優勝を争った浦和、2差で迫る鹿島がともに敗れたため05年以来の頂点に立った。J2降格圏16位からの優勝は史上初。ドイツから昨年途中に復帰したFW宇佐美貴史(22)がJ2に沈んだクラブを完全復活させた。13日の天皇杯決勝で3冠を狙う。

 いつまでも歓喜の余韻に浸っていたかった。喜びに沸く敵地鳴門。選手が引き揚げてからも、宇佐美は1人だけ、シャーレ(優勝銀皿)を高く掲げたままピッチに残った。生まれ育ったG大阪でリーグの頂点に立つ-。子供の頃から抱いていた夢は、現実になった。

 首位で迎えた最終節は徳島に0-0。試合が終わっても、まだ状況をのみ込めずにいた。終了の笛から2分15秒後。浦和が敗れたことを知ると、体が震えた。

 「しばらく実感はなかったけど、優勝したと思ったら、頭が真っ白になりました。このままならいけるかな?

 浦和も鹿島も両方負けているみたいやったから。本当は勝って決めたかった。想定はしていましたけど、あれだけ(相手DFに)引かれると難しい。今日は泣いてないです」

 絶望のふちにいた。開幕前の2月19日の練習中に、左足腓骨(ひこつ)脱臼の重傷を負った。歩くことすらできない。ひんやりとした病院の廊下、車椅子を押してもらった。目指していた14年W杯メンバー入りも閉ざされ、言葉を失った。血液検査、心電図と手術の準備が進んでいく。車椅子を押してくれたクラブの谷垣運営担当が「これが現実なんだ。でもな、貴史、まだ終わってないぞ。ここから復活すれば、ドラマみたいやな」。そう話しかけられて、ようやく「はい」と言葉を絞り出した。

 2年間のドイツでの武者修行では、世界の壁にぶつかった。昨年6月にG大阪に復帰する際、ユース時代から指導を受けた松波正信前監督に連絡した。「頼むぞ。復活させるのは、お前しかいないぞ」。そう告げられると、宇佐美は「これからは、ガンバのためにやります」と約束した。

 J2で18戦19得点を挙げ、1年でのJ1復帰に貢献。今季は悪夢のような長期離脱から復帰後、26戦10得点で夏場に5連勝、秋にも7連勝。昇格初年度の頂点へ導いた。この日も無得点ながら両軍最多4本のシュートを放ち、エースの貫禄を見せた。一時はJ2降格圏16位に沈みながら、史上最大の大逆転劇。主役はまさしく、宇佐美だった。

 「J2に落ちた時、まだ僕は海外にいた。でもほぼ全員がチームに残留して、ガンバをJ1に上げると言ってくれていた。だから僕もという気持ちはありました。(今季は)自分の理想よりも、まだ半分。50%くらい。それでも優勝に貢献できたのはうれしい」

 果てしない夢がある。天皇杯も制すれば、00年度鹿島以来、史上2クラブ目の3冠達成。その先には、日本代表のエースとしてW杯で活躍する姿を思い描く。復活ストーリーは、まだまだ続く。【益子浩一】<記録的優勝アラカルト>

 ▼史上最大の逆転優勝

 今季のG大阪は5月17日の第14節時点では勝ち点15の16位。当時首位の浦和(勝ち点29)との勝ち点差は14あった。最大14差を逆転しての優勝は05年のG大阪、昨年の広島が記録した12差を上回り史上最大差。また現行の18チームによる1シーズン制となった05年以降、開幕当初を除く第3節以降に降格圏16位以下だったチームの優勝も初。

 ▼昇格即優勝

 G大阪は昨季J2在籍。昇格初年度J1制覇は11年の柏以来2チーム目。柏はナビスコ杯が初戦、天皇杯が4回戦敗退。G大阪はナビスコ杯を制しており昇格初年度で2冠は初。

 ▼最長ブランク優勝

 G大阪の優勝は05年以来9年ぶり。横浜の8年ぶり(95~03年)を更新する史上最長ブランク。

 ▼引き分けて優勝

 1シーズン制の05年以降で初。過去延べ9クラブはいずれも勝って優勝を決めた。2ステージ時代を含めると、引き分けで優勝決定は00年第2ステージの鹿島以来、14年ぶり2度目。