<Jリーグアウォーズ>◇9日◇横浜

 初物ずくめのシーズンは、16年ぶりの快挙で締めくくった。東京の日本代表MF武藤嘉紀(22)が、今季のベストイレブンに選ばれた。ルーキーは98年の浦和MF小野伸二以来で、現役大学生での選出は初めて。プロデビューした今季、13得点を決め新人最多得点タイ記録が、大きく評価された。

 新調したばかりのタキシードを身にまとい、武藤が舞台上の階段を上っていった。今季のベストイレブンだけが立てる壇上。並んだ11人の中でルーキーは唯一どころか、98年以来16年ぶりの受賞。いつもはさわやかな笑顔も、緊張からか少しぎこちなかった。受賞後、取材ゾーンでは「舞台に立ったらドッと緊張して、言いたいことがしっかり言えなかった」と初々しかった。

 プロデビューを果たした今季、振り返ってみれば初めての連続だった。開幕初先発、初ゴール、初代表、そしてアギーレジャパン初弾。1年間走り抜いた新星が、東京の「顔」の1人としてDF森重、太田とともに出席が決まると、向かったのは紳士服店だった。初めての晴れ舞台に備えて採寸し、購入したばかりのまっさらなタキシード。ビシッと着こなす姿は様になっていたが、開幕前の想像ははるかに超えた。

 開幕時に登録したMFでの選出だったが、シーズンを通してはFWとして得点を積み上げ、名を上げていった。今季13得点は新人最多得点タイ記録。「すごいことをやったとは思わないけど、よく頑張ったんじゃないかなと。普段は自分をほめることはあんまりないけど」。22歳の顔に充実感が表れた。

 Jリーグは、生まれたときから身近にあった。1歳を迎えるちょうど2カ月前にJが開幕。物心ついたときには「Jリーガーになりたい」と言っていた。世代別代表歴もなく、瞬く間に新星となって輝いた。同じ92年生まれのプラチナ世代で、高校時代から将来を嘱望された柴崎や宇佐美と肩を並べて受賞した。

 強烈な印象を残し今季最終節翌日から体を動かし、すでに再スタートを切っている。1カ月後に迎えるアジア杯。次なる大舞台が、武藤を待っている。【栗田成芳】<ベストイレブン受賞者>◆GK

 西川周作(28=浦和)34試合、32失点、3回目◆DF

 太田宏介(27=東京)34試合、1得点、初選出

 森重真人(27=東京)33試合、1得点、2回目

 塩谷司(26=広島)32試合、6得点、初選出◆MF

 柴崎岳(22=鹿島)34試合、6得点、初選出

 武藤嘉紀(22=東京)33試合、13得点、初選出

 レオ・シルバ(28=新潟)33試合、6得点、初選出

 遠藤

 保仁(34=G大阪)34試合、6得点、11回目◆FW

 大久保嘉人(32=川崎F)32試合、18得点、2回目

 宇佐美貴史(22=G大阪)26試合、10得点、初選出

 パトリック(27=G大阪)19試合、9得点、初選出