仙台の渡辺晋監督(41)が、今季のスタイルに“堅守賢攻”をぶち上げた。鹿児島キャンプ最終日の2日、約1時間のリカバリーで第1次キャンプを打ち上げ、目指すサッカー像を明言した。明日4日から始まる宮崎・延岡での第2次キャンプでは、渡辺流の「賢攻」をチームに落とし込む作業に入っていく。

 渡辺流のサッカー哲学でクラブを常勝軍団へ導く。初めてキャンプから指揮を執る渡辺監督が明確なスタイルを口にした。「今年は堅守賢攻。球際、走力、切り替えの3つのベースがあっての堅守に、僕の哲学である賢いサッカーが攻撃面で表現できれば」。ハードなフィジカルトレーニングと練習試合1試合で土台作りを行った第1次キャンプの最終日に、初めて理想とするチーム像を語った。

 オフの間に熟考し、編み出した答えが「賢攻」だった。今季は13選手が抜け12選手が新加入。始動からこの日まで、選手個々のプレースタイルや考え方を見て「今いる選手たちは能力も高く、のみ込みも早い」と感じた上で「賢さをプラスできたら、この選手たちは代表にもなれる」と手応えをつかんでいた。

 自らの経験がベースになっている。現役時代はDFで、プロ通算9年間で126戦(8得点)に出場。「技術レベルも、身体能力も特出したところのない選手だったが、賢さを身に付けたことでやってこられた」と、頭脳プレーで厳しい世界を生き抜いてきた自負がある。

 逆に言えば、守備陣が嫌がる攻撃の仕方も熟知。身をもって体験した豊富なパターンが脳内にはある。だからこそ、堅守からの攻撃は「速攻1つじゃない」。優先順位は速攻が最上位に変わりはないが「カウンターをやり切るのかやり直すのか、あるいはどう崩していくのか」と頭の使い方が重要になる。明日4日からの延岡キャンプでは、持論を浸透させ、「賢攻」を植え付けていく作業に入る。【成田光季】

 ◆渡辺監督の現役時代

 札幌、甲府、仙台でプレーし、プロ9年間でJ通算126試合に出場したDF。主にサイドバックを務め、鋭い読みと184センチの長身を生かして空中戦やセットプレーからの得点でも強さを発揮した。甲府時代は、GK以外の全ポジションをこなすマルチプレーヤーだった。