J3藤枝で、東大経済学部4年の新人選手がプロ生活をスタートさせた。MF添田隆司(21)。卒業後は大手商社に就職予定だったが、同チームからオファーを受け、あえて厳しいプロの道を選択した。豊富な運動量が武器のサイドハーフで、目標は今季ピッチに立つことだ。学生時代の学業とサッカーの両立、そしてプロの道を選択した思いを聞いた。

 添田は既に焼津市に住み、チーム練習に合流している。東大は東京都大学リーグ1部に所属する。「下手だから走れというチームで。今も運動量が自分の強みです」。実際、チームの持久力測定でも上位にランクイン。プロのスピードにも慣れ始め、守備面の強化を意識し練習に励む。

 添田

 まずはピッチに立つことが目標。ピッチに立たないと何も見えてこない。最終的にはスタメンも狙っていきたい。

 当初はサッカーに区切りをつけ就職する予定だった。「世界を俯瞰(ふかん)で見る仕事がしたかった。あと、モテそうだったし(笑い)」と、三井物産に内定した。そのまま就職する予定も、昨年12月に藤枝MYFCからオファーが舞い込んだ。悩んだ末に出した結論はプロ入りだった。

 添田

 1つの理由は自分の価値観として挑戦し続けられる人間でありたかったから。(Jオファーの)機会は普通に生きていたらめったにない。もう1つはもっと上の環境で(サッカーを)やったときに伸びシロがあるのではないかと思ったから。後は覚悟の問題でした。

 両親は添田の選択に驚きつつも「やってきなさい」と応援する。

 小学校から高校まで筑波大付属。成績は高2までは学内で平均レベルだった。自由奔放な家庭で「漫画とゲームはバンバン、テレビもガンガン(笑い)」。両親から勉強を強制されたことは1度もない。それでも、高校時代は「数学と英語はやろう」と、在籍したサッカークラブ(横川武蔵野FCユース)での練習前の1時間は近隣の喫茶店で勉強に励んだ。高2の冬、センター試験の模擬試験を受けたところ結果は正答率6割。「これはマズイ」と、東進ハイスクールに入り練習後に通った。

 東大受験はクラブの先輩が入学し「思い切りサッカーができる環境」と聞いていたことに加え「理論的には、東大を目指せば近辺の大学には入れる」と選択した。模試では「合格率5%以下」が続くも、センター試験1カ月前に成績が急上昇。本番では835点(900点満点)を獲得した。

 添田

 学校では夏の実力テストも110位。東大に現役合格したのは学校でも20人ぐらいだったので、低空飛行して最後に伸びたという感じでした(笑い)。

 好きなサッカー選手は中山雅史氏、岡崎慎司。泥くさくゴールを狙う姿勢に共感している。「顔面でも何でもいい。気持ちでゴールを狙いたい。勉強はスマートですけど、サッカーはスマートにできないんです」と笑う。最後に、将来の展望を聞いた。

 添田

 1年1年が勝負。3年でやれるところまでやる。無理だと思ったら、見切りは早めにつけないといけないけど、そういう気持ちでやってるわけではない。死ぬ気で退路を断って来ている。何としても芽を出すという気持ちでやっていきたい。

 学業同様、サッカーでも一気に上昇気流に乗ってピッチで輝いてみせる。【構成・岩田千代巳】

 ◆添田隆司(そえだ・たかし)1993年(平5)3月15日、東京都生まれ。幼稚園でサッカーを始める。中学はBANFF横浜ベイ、高校は横河武蔵野FCユースでプレー。東大では1年の時に東京都大学リーグ1部で優勝。4年では主将を務めたが、リーグ9位に沈み同2部に降格した。家族は両親、弟。170センチ、68キロ。血液型O。