ベルギーはチームのまとまりで過去最高位の3位を手にした。

 試合は中3日のベルギーに対し、イングランドは延長戦を戦っての中2日というコンディションの差もあった。ただ、ベルギーのチームとしての万能性がイングランドを封じ込めた。

 ベルギーはE・アザール、ルカク、デブルイネら個人能力に優れた選手が揃っているが、個人に頼ってサッカーをしていない。1点目の場面、MFシャドリがヘディングでFWルカクへつなぎ、左前方へダッシュ。すかさずルカクは左サイドへパスを流し、そこからの折り返しへ右MFのムニエがハーフウェーラインからゴール前まで走り込み、右足で押し込んだ。ちなみにベルギーはこのムニエが今大会チーム10人目の得点者、どこから誰もがゴールに絡んでいるのが特徴だろう。

 後半30分のカウンターの場面では、MFマルテンスが自陣からワンタッチパスで周囲と連動して縦へと抜け出し、最後はそのマルテンスの左サイドからのクロスボールにムニエが右足ボレーできれいなシュート。イングランドGKピックフォードのファイセーブでゴールはならなかったが、ベルギーらしくチームで連動して崩す形が出た。

 また、後半37分のE・アザールの2点目も連係からの崩しだったが、注目したいのはその個人技の高さ。ファーストタッチで「ここ」というところにボールを置き、セカンドタッチで並走する相手選手が走る前に入ってボールを持ち出している。この時点でゴールは決まったようなもので、しっかり顔が上がった状態でシュートを打っていた。身長173センチと小柄なE・アザールが大柄な選手を相手に潰されず、ドリブル突破できるのはコース取りのうまさゆえだ。

 この日のイングランドがパスの出し手と受け手の「2人称」に陥りがちな中、ベルギーはボールの出し手と受け手、さらに3人目の動きを次々と重ねていくプレーは見事だった。しっかりお互いが走る位置を意識し、カウンター攻撃のイメージを共有している。どんどんボールを持つ選手の前にフリーの選手が飛び出していく動きがあった。

 ベルギーはボールポゼッションができるチームだが、あえて守備ブロックをつくり、相手を自陣に引き込んでからスピードアップして効率よく攻めている。ただ、ことさらカウンターが強調されるが、これはベルギーにとっては一つの武器だということに他ならない。

 スペイン人のマルティネス監督の下、スペイン代表のようにしっかりボールを動かして相手を消耗させることもできる。加えてパワーもあるし、高さもある。つまり万能のチームだった。例えばルカクなどはグリグリとドリブルで前へ行ける選手だが、常に周囲を走る選手を意識し、シンプルに使うことを心掛けていた。

 チーム戦術の中に個人のスキルが入っている。ベルギーは大会を通じて印象に残るグッドチームだった。(永井雄一郎=プロサッカー選手、元日本代表)

ベルギー対イングランド 3位となり記念撮影するベルギー代表。前列左からマルティネス監督、E・アザール、デブルイネ、カラスコ(撮影・江口和貴)
ベルギー対イングランド 3位となり記念撮影するベルギー代表。前列左からマルティネス監督、E・アザール、デブルイネ、カラスコ(撮影・江口和貴)