勝っても一切ブレない。1次リーグ初戦で強豪コロンビアを撃破した日本代表の西野朗監督(63)が一夜明けた20日の練習後、チームに約半日のオフを与え選手を“解放”した。状態を見極め、予定されていた控え組とU-19(19歳以下)日本代表との練習試合を先送りし、軽めの調整で終了。セネガル戦(24日・エカテリンブルク)に向け、ゆとりが売りの西野ジャパンは、しっかり心と体を休めた。

 勝ったから絵になるのではなく、いつも格好いい。コロンビアを破る番狂わせ“サランスクの小さな奇跡”から一夜明けた西野監督は雨の中、腕組みして静かに控え組の練習を見守った。

 練習後、隣接する宿舎に戻る際に報道陣から「寝られましたか?」と声が掛かった。腰の前で静かに人さし指を左右に振って苦笑い。声に出すわけでもなく“No、No”とジェスチャーだけで示した。さえ渡るダンディーぶり。前夜のさえ渡った采配も、一夜明けた振る舞いも、すべて西野流全開だ。

 勝ったから休むのではない。昼食後、予定通り選手にオフを与えた。23時59分の門限を設定、異例の外出OKにして選手を“解放”。事前合宿地オーストリアでも、スイス戦翌日に同じように休みを与えてリフレッシュさせ、続くパラグアイ戦の勝利につなげた例がある。

 出国前、応援に訪れた家族と触れ合う機会の家族デーについて「そういう時間を考えています。おそらく(1次リーグ)第1戦が終わったあとぐらいになる」と話していた。このリクエストに応えこの日、日本協会もカザンに選手が家族や関係者と面会できる施設を確保した。家族と触れ合える場も整えた。選手にも家族にも優しい指揮官は、まず精神面をリフレッシュさせ大事なセネガル戦に向かう。

 勝ったからといって浮かれもしない。22年前、96年アトランタ・オリンピック初戦でブラジルを撃破する“マイアミの奇跡”で好発進したが1次リーグで敗退した。会見後に「同じ轍(てつ)は踏まないように」と自らに言い聞かせるように話していた。1次リーグ突破へ、次なる難敵に目を向け、切り替えている。【八反誠】