サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会日本代表・西野朗監督(63)の退任が決まった。日本サッカー協会の田嶋幸三会長(60)が5日の帰国会見で「慰留はせず、今月末で終了する」と公表した。西野監督は決勝トーナメント1回戦のベルギー戦の翌日(3日)、田嶋会長から契約延長を打診されたが断った。同協会は次期監督の第1候補を失ったが、日本人監督の継続路線は貫く構え。今後は20年東京五輪代表監督の森保一氏(49)の兼任案を軸に、人選を進めていく。

 首を縦に振らなかった。ベルギー戦の翌日、西野監督は田嶋会長から契約延長の打診を受けた。ハリルホジッチ前監督解任から3カ月、壮絶な戦いを終えたばかりの時点で受けた延長オファー。協会幹部によると、西野監督は田嶋会長の問いに「疲れた」を何度も言ったという。指揮官に今後のことを考える余力はなかった。誘いはその場で丁重に断った。日本協会は、年俸2億円の2年契約という提示もできないまま最有力候補を逃した。

 5日に帰国した西野監督は「契約は7月末日までです。この任を受けた時に、W杯終了までと思っていた。今は任期をまっとうしたという気持ちでおります」と退任報告した。田嶋会長も「慰留することはしませんでした。これで西野監督は終了することになります」と、退任を正式に発表した。同会長は「今後、西野さんには違った形で日本のサッカー界をサポートしていただく」とも話しており、日本協会の強化担当副会長の就任なども視野に入れている。

 西野監督は逃したが、日本人監督継続路線は変えない。今後は3カ月間、西野監督を補佐した森保氏を軸に再人選に入る。J1最多270勝の西野監督の実績には及ばないが、森保氏は広島で12、13、15年にリーグ戦優勝するなど実績は申し分ない。W杯開幕前までは、次期候補として有力視されていたことから、違和感は少ないはずだ。

 実は西野氏は監督就任直前の技術委員長時代に、W杯ロシア大会後のA代表監督として森保監督の兼務を勧めたことがある。「兼務は日程的に難しいけれど、調整すればやれなくはない。個人的には森保を育てていきたいと思っている。Jリーグで対戦した時から感じていたけれど、その素質は十分あると思っている。これからA代表監督は日本人がやるべきで、森保は適任者」と、技術委員の前で話したことがある。

 日本代表は今大会を最後にMF本田と長谷部が代表引退を宣言した。4年後のW杯カタール大会に向け、世代交代を進めていくことになる。森保監督が兼務すれば、A代表と五輪年代の交流がより活発になることが考えられる。今後、若手の海外クラブへの移籍はより活発になるはず。海外クラブ所属の若手は、五輪代表の試合には呼べないが、A代表のマッチデーなら拘束力があるため招集できる。オランダ1部フローニンゲンMF堂安律ら、東京五輪世代を招集することもできる。

 20日に開かれる技術委員会では、西野ジャパンの検証とともに人選を進めていく。西野監督を逃したままでいいのか、森保監督は兼務できるのか、それとも第3候補の調査に入るのか。次期監督の選定作業は、長期戦に突入する可能性もある。