W杯ロシア大会の決勝が行われ、フランスがクロアチアを4-2で下し、自国開催だった98年大会以来2度目の優勝を遂げた。史上初の決勝オウンゴールで先制し、1-1の前半38分に今大会から導入されたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)で獲得したPKで勝ち越し。新星エムバペも決めた。クロアチアは98年大会の初出場3位を超える準優勝となった。欧州勢の制覇は4大会連続。6月14日からの祭典は閉幕し、次回は22年にカタールで初開催される。

 W杯通算900試合目となった決勝で、新時代のフランスが大勝した。まず前半18分に先制。ペナルティーエリア右角から、FWグリーズマンが自ら得た直接FKを左足で放り込むと、相手の190センチFWマンジュキッチの頭をかすめてコースが変わった。GKの手先を通ってゴール左上へ。グリーズマンはコーナーポストへ走り、歓喜の右アッパー。赤白チェック柄のサポーターで埋まったゴール裏を黙らせた。決勝のオウンゴールは史上初だった。

 同点に追いつかれた7分後には、今大会を象徴する場面が繰り広げられた。フランスの右CK。マンジュキッチにクリアされたが、競り合った仲間がハンドを主張した。主審が映像で確認し、PKスポットを指さす。キッカーのグリーズマンがセットすると雷鳴がとどろいた。雨の中、ゴール左へ流して勝ち越した。準Vに終わった2年前の欧州選手権で流した涙を、モスクワの雨でぬぐい去った。

 後半7分には水を差す珍事も発生。男女4人がピッチに駆け込み、警備員に宙づりで退場させられるまで1分間、試合が中断した。場内は騒然としたが、流れは変わらない。6分後に新将軍ポグバが左足で3点目を奪い、さらに6分後、19歳エムバペが4点目を右足ミドルで決めた。決勝での10代ゴールはペレ以来60年ぶり。タレントがそろい踏みで頂点に駆け上がった。

 前回98年の初V時、主将だったデシャン監督はスーツ姿でも優勝杯を掲げた。選手と監督でW杯を制したのはザガロ、ベッケンバウアーに続き3人目。23選手の平均年齢25・6歳という若い集団を率い、自国開催で準優勝に終わった2年前の欧州選手権の借りを返した。その時の決勝メンバーとこの日では半分の5人が入れ替わった。エムバペら若手を抜てきし、世代交代ではなく、さらに強化した手腕がW杯で証明された。

 かつての美しいスタイルより、現実的に勝ち切る戦力が批判もされたが、指揮官は「美しい歴史の1ページを刻みたい」と決勝に懸けていた。ウルグアイ、アルゼンチンに並び4位タイとなる2度目の優勝。「ユニホームにある星は98年のもの。自分たちの星が欲しいんだ」と燃えていたポグバら「レ・ブルー」(愛称)の胸に、20年ぶりに新たな星が輝いた。【木下淳】