クロアチアが敗れたものの、同国の歴代最高成績となる準優勝で大会を終えた。MFモドリッチ(32=Rマドリード)が大会MVPを獲得。史上初だった準決勝までの3試合連続延長戦もすべてフル出場するなど、司令塔としてチームの躍進を支えた。98年フランス大会で3位に入って以降は決勝トーナメントに進めず、10年には予選敗退も経験。長い沈滞を乗り越え、古豪復活を印象づけた。

 芸術的なパスで最後まで打開を図った司令塔モドリッチは、試合終了の笛を聞くとがっくり膝に手を付いた。MVPのトロフィーを手にしても笑顔を作らなかった。「代表が達成したことは大きなことだから祝いたいけど。甘く、苦い感情だ」と複雑な胸中を口にした。

 準決勝から決勝までの間隔はフランスより1日短かった。加えて、準決勝まで3試合連続延長で120分戦った。モドリッチは7試合すべてに出場し、694分間プレー。前半、オウンゴールとPKという消化不良の2失点で後半ロスタイムに入っても、走ることをやめなかった。「ピッチの上に自分たちのすべてを残してきた」と言った。

 172センチ、66キロの小柄な背番号10が、屈強な相手に囲まれても軽やかにすり抜けてパスを通し、シュートを決める。小国が大国に立ち向かう象徴的な姿が強烈に支持された。国内ではビールやスナック、テレビなどが飛ぶように売れた。経済効果は約20億ドルにも上るという。「一生に1度の機会かも」と、2500ドルに高騰した観戦チケットや1500ユーロの航空券を買ってモスクワ入りするファンもいた。FIFAの発表では、大会を通じての攻撃回数は出場トップの352回。決勝でもシュート数はフランスの倍近い14本だった。敗れてなお、プライドを示した。

 32歳で次回の出場は難しいかもしれない。「いいプレーをしても勝てないのがサッカーだ。だからこそ世界で一番素晴らしいスポーツ。クロアチアの歴史において大きな意味があった」。誇れる準優勝だった。【岡崎悠利】