バルセロナのローマへの道
欧州CLファイナル決勝トーナメント1回戦
<第1戦=アウェー:1−1リヨン>◇2月24日◇リヨン
停滞ムードのチームをFWアンリが救った。ホームのリヨンに前半7分に先制されて迎えた後半22分。メッシの右CKをDFマルケスが頭で流し、左からアンリが飛び込んで頭で押し込んだ。値千金のアウェーゴールで何とかドローに持ち込んだ。
21日のスペインリーグで最下位エスパニョールとの「バルセロナダービー」に1—2で敗れ、開幕のヌマンシア戦(0—1)以来6カ月ぶりのリーグ戦黒星を喫した。リーグ連続不敗も23試合で止まり、同試合でDFアビダルが右足を痛めて全治2カ月とショックが重なっただけに、勝利に匹敵する引き分け。ホームでの第2戦に向け優位に立ったグアルディオラ監督は「アウェーでゴールを決めることができてよかった。第2戦のためにも、この試合では引き分けが必要だった」と胸をなでおろした。
- 決勝トーナメント1回戦第2戦でゴールを決め胸に手を当てながら歓喜するアンリ。右はメッシ(AP)
<第2戦=ホーム:5−2リヨン>◇3月11日◇バルセロナ
FWアンリが欧州CL通産50得点を記録した。前半25分、DFマルケスの縦パスに鋭く反応し、オフサイドぎりぎりで抜け出して右足で先制ゴール。2分後にもオフサイドラインを巧みに破り、左足で2点目を決めた。アンリのゴールが呼び水となり、先制点からわずか18分間でメッシ、エトーも加点。前半だけで4ゴールを奪って5—2、2戦合計6—3と大勝した。
97年にモナコで欧州CLデビューしたアンリは、11年連続でこの大会に出場。「欧州最高のストライカー」と称された男は、通算103試合目での大台到達に「ゴールには満足。でも、チームが勝ったことの方がうれしい」。大きな輝きを放ったアーセナル時代に33ゴールを量産したが、その古巣もこの日8強入りを決めた。アンリは「アーセナルも突破したの? それもまた最高だね」と笑顔だった。
準々決勝
<第1戦=ホーム:4−0バイエルン>◇4月8日◇バルセロナ
- 準々決勝第1戦前半、バルセロナのメッシ(右)はゴールを決め笑顔で駆けだす。左はエトー(AP)
メッシが全得点に絡む大活躍で4—0圧勝の主役になった。前半9分、MFイニエスタらのパス交換に引き付けられた相手DFラインの裏にタイミングよく飛び出す。左足で冷静に流し込んだ先制弾がゴールラッシュにつながった。
12分には右サイドからピッチを横切るようにドリブルを開始。相手を引き付け、左足で進行方向右斜め後方にスルーパスを出した。チームメートさえもあざむくようなプレーにFWエトーが反応。GKとの1対1から楽々とチーム2点目が決まった。さらにメッシは38分、アンリの右クロスに飛び込んで右足で押し込む自身2点目。5分後には敵陣深くでのドリブル突破で相手のクリアミスを誘い、FWアンリのダメ押し弾を誘った。
メッシに対する警告に抗議したグアルディオラ監督が退場処分になり、第2戦はベンチに入れなくなったが、大量リードで4強進出は事実上決定。メッシは試合後、65%のボールキープを示した戦いを「すべてがうまくいくわけじゃないけど、自分たちが喜びを感じながらプレーすれば、事態はずっと簡単になる」と振り返った。バイエルンのクリンスマン監督は「バルセロナのすばらしいプレーの前に、我々は自分たちの限界を知らされた。欧州で4強に入るためには、今後はチーム改革に当たらなければならない」と白旗を掲げるしかなかった。
<第2戦=アウェー:1−1バイエルン>◇4月14日◇ミュンヘン
余裕十分の戦いぶりで4強進出を決めた。第1戦には及ばなかったが、この試合のボールキープ率も60%。捨て身で攻撃を仕掛けるバイエルンをはぐらかし続けた。
後半2分、第1戦の完敗に思わず涙を流したリベリーに先制弾を決められたが、慌てる必要はない。逆に28分にMFケイタが同点ゴールをお返ししてそのまま1−1で引き分けた。グアルディオラ監督に代わって指揮を執ったビラノバコーチは「1点でも奪えば決着がつくのは分かっていたが、あまり多くのリスクを冒したくなかった」と選手たちを抑え、無理せずに戦ったことを明かした。
準決勝
<第1戦=ホーム:0−0チェルシー>◇4月28日◇バルセロナ
欧州最高の攻撃陣がチェルシーGKツェフにはね返された。常に相手陣内で試合を進めながらゴールが遠い。前半34分、アンリの強烈な一撃がセーブされる。後半17分にはダニエル・アウベスの右足シュートを、25分にはエトーのコースを狙ったシュートを左足1本で止められた。ロスタイムにはメッシのスルーパスからフレブが抜け出したが、それでもいネットを揺らせない。ボールを65%支配し、シュート数で20対3。内容で圧勝しながら結果が伴わなかった。カンプノウでは昨年4月23日の欧州CL準決勝マンチェスターU戦(0—0)以来の無得点試合になった。
メッシに対応するためにDFボシングワを左サイドで起用してきたヒディンク采配にも苦しめられた。グアルディオラ監督は「相手は5、6人が守備に回った上にフィジカルが強い。決定機こそあったが難しい試合だった」と悔しさを隠さなかった。後半早々マルケスが左ひざじん帯を損傷して今季絶望。代わって入ったプジョルは累積警告で第2戦は出場停止と踏んだり蹴ったり。センターバック不在の苦境に、同監督は「選手を信じなければ」と顔を歪めた。一方、狙い通りの戦いにヒディンク監督は「バルサの得点力を考えれば、無失点に抑えたことがどれだけ大きな意味を持つかが分かる。ツェフの貢献がチームを救った」と称賛を惜しまなかった。
<第2戦=アウェー:1−1チェルシー>◇5月6日◇ロンドン
- 準決勝第2戦後半終了間際、バルセロナのイニエスタ(中央=8)が右足でゴールを決める(AP)
土壇場の奇跡で決勝の地ローマにたどり着いた。敗退濃厚、0—1で迎えた後半ロスタイムにMFイニエスタが同点ゴールを決めた。チームとして初めて枠内に飛んだシュートで追いつき、昨季準優勝のチェルシーと1—1で引き分けた。ホームでの第1戦が0—0だったため、アウェーゴール数で上回り、決勝進出を決めた。
時計は後半47分を回っていた。エトー、メッシとつないだボールがイニエスタの前に転がる。右足を思い切り振り抜くと、ボールはチェルシーのGKツェフの伸ばした手の先を抜けてネットへ。劇的な同点ゴール。ユニホームを脱ぎ捨てて走るイニエスタに、選手が次々と抱きついた。グアルディオラ監督は興奮を抑えきれずに両手を高々と上げ、選手のもとへ猛ダッシュした。
前半9分に失点した。FWアンリを負傷で欠いた攻撃陣が空回り。メッシのドリブルもゴール前で止められた。DFアビダルの一発退場でさらにゴールは遠くなった。。昨季の準決勝、ホームで0―0と引き分けたマンチェスターUにアウェーで0―1と敗れている。メッシは言った。「もう終わりだと思った。去年の試合を思い出した。でも、今夜はイニエスタがいてくれた」。今大会初ゴールのイニエスタは「開始5分だったら2階席に打ち込んでいたかもね」と笑いながら「自分の魂をボールに込めて打った」。アンリ不在で、いつもよりFWに近い位置でプレー。エトー、メッシらと前線を走り回って最後に大きな仕事をした。グアルディオラ監督も「彼の技術に救われた」と、攻守に抜群のセンスを見せるスペイン代表MFを絶賛した。
3大会ぶり3度目の優勝にあと1勝。連覇を狙うマンチェスターUと決戦だ。
バルセロナの決勝までの道程
日付 | スコア | 場所 | 対戦相手(国) | 得点者 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
3次予選 | 08年8月13日4 | ○ | 0 | H | ビスワ(ポーランド) | エトー2、シャビ、アンリ | 08年8月26日 | 0 | ● | 1 | A | ビスワ(ポーランド) | 1次リーグ | 08年9月16日 | 3 | ○ | 1 | H | スポルティング(ポルトガル) | マルケス、エトー、シャビ |
08年10月1日 | 2 | ○ | 1 | A | シャフタル・ドネツク(ウクライナ) | メッシ2 | |
08年10月22日 | 5 | ○ | 0 | A | バーゼル(スイス) | メッシ、ブスケツ、ボージャン2、シャビ | |
08年11月4日 | 1 | △ | 1 | H | バーゼル(スイス) | メッシ | |
08年11月26日 | 5 | ○ | 2 | A | スポルティング(ポルトガル) | アンリ、ピケ、メッシ、OG、ボージャン | |
08年12月9日 | 2 | ● | 3 | H | シャフタル・ドネツク (ウクライナ) | シウビーニョ、ブスケツ | |
1次リーグC組 4勝1分1敗 勝ち点13 1位通過 | |||||||
決勝T1回戦 | 09年2月24日 | 1 | △ | 1 | A | リヨン(フランス) | アンリ |
09年3月11日 | 5 | ○ | 2 | H | リヨン(フランス) | アンリ2、メッシ、エトー、ケイタ | |
準々決勝 | 09年4月8日 | 4 | ○ | 0 | H | バイエルン(ドイツ) | メッシ2、エトー、アンリ |
09年4月14日 | 1 | △ | 1 | A | バイエルン(ドイツ) | ケイタ | |
準決勝 | 09年4月28日 | 0 | △ | 0 | H | チェルシー(イングランド) | |
09年5月6日 | 1 | △ | 1 | A | チェルシー(イングランド) | イニエスタ |
バルセロナメモ
スペインリーグ屈指の名門クラブで、創設は1899年。Rマドリードとの対戦は「エル・クラシコ」と呼ばれ、国中の注目を集める。メッシ、エトー、アンリらを擁するスター軍団であり、過去にロナウジーニョやロナウド、フィーゴ、リネカー、クライフ、ストイチコフらが所属していた。
国内リーグは1928−29年の初代王者であり、過去に18回優勝。欧州CLは1991−92年に初制覇し、92年にトヨタ杯に挑戦したがサンパウロ(ブラジル)に1−2で敗れた。
05−06年の欧州CLは1次リーグを5勝1分け勝ち点16、得点16、失点2の圧倒的な強さで勝ち抜いた。決勝トーナメント1回戦でチェルシー、準決勝はACミランと強豪を下し、決勝戦ではアーセナルと対戦。前半に先制を許すが、後半にエトーらの得点で逆転し、14年ぶり2度目の欧州の頂点に立った。
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