何事においても、カッカするとうまくいかないことが多い。

 巨人の杉内俊哉投手はかつて、ノックアウトされた降板直後、悔しさのあまりベンチを素手で殴りつけ、両手を骨折。全治3カ月となった。

 サッカーのプレミアリーグでは、選手以上にエキサイトした監督が、思わぬアクシデントで負傷した。

 やってしまったのはアストンビラのティム・シャーウッド監督(46)。29日にホームのビラ・パークで行われたサンダーランド戦の後半34分のことだった。

 途中出場したアストンビラのスペイン人MFカルレス・ヒル(22)がペナルティーエリア内で倒された。だが主審は故意に倒れたとしてヒルにイエローカードを提示。PKは与えられなかった。

 シャーウッド監督はこれに激怒。ベンチ前で水のボトルを蹴ると、その後、足を引きずりながらピョンピョンと跳ね、ひざに手を突きながらうずくまってしまった。

 試合は結局2-2のドロー。ヒルにPKが与えられていればアストンビラが3-2で勝利する可能性もあったが、悔しい勝ち点1となってしまった。

 英ミラー紙(電子版)によると、試合後、冷静さを取り戻したシャーウッド監督は苦笑いしながら、次々と言葉を並べたという。

 

 「水のボトルを思い切り蹴り飛ばそうと思ったが、前に何人も人がいたんだ。だから思いとどまって、かかとで後ろに蹴った。そうしたら太もも裏をやってしまった」。

 「選手の時にも太もも裏をケガしたことなんてなかったのに、監督になってからやってしまうとは…」。

 「きっと駄々っ子のように映るだろうね」。

 「でも当然、得られるものが得られなかった時、だれだって八つ当たりしたくなるだろ? それともオレだけ?」


 ただ、ホームで目前の勝利を逃し、自らは太ももを負傷してしまったにもかかわらず、試合後のシャーウッド監督に重苦しい雰囲気はなし。いつもの快活で陽気な調子が戻っていたという。

 こういう後腐れのないタイプの指揮官はメディアにも選手たちにも好かれるだろう。モチベーターとして優秀だという評価もうなずける。

 激怒してボトルを蹴ろうとしながらも、目の前に人がいることを冷静に判断する思慮深さもある。筆者も思わずシャーウッド監督を応援したくなってしまった。

 【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)